雌ライオンはひとりでいい 1

ドクターストップをストップ ページ29

「別に。
八木先生が居ても変わりませんから。」
　
葛西さんはそう言って、私を見た。
凍りつきそうな冷たい目で。

「私とあなたは同じ環境にいる。
だから、私にはわかるから話せって言うのがあなたの狙いでしょうけど、同じなんて笑わせないでよ。」

始まった…。

「あなたが仕事してる間、娘さんはどうしてるの？」

「母が見てくれています。」

ふって鼻で笑われた。

「ご主人どんな方？」

「医者です。」

「無医村医療をされてる先生で、大学病院にも心臓外科で席がある先生です。」

将吉先生が伝えてくれた。

「医者と弁護士、絵に描いたような優等生夫婦ね。」

何が言いたいんだろう…。

「あなたが仕事することに、理解があるんでしょ？」

「理解はしてくれてますけど、出ることには基本反対です。」

「ふぅん。」

「ご両親健在？」

「私の両親は他界してます。
　主人の方は健在です」

「それなら、ご主人の親が子供見てくれるんだ。
姑とも仲良しないい嫁？」

「娘を見てるのはら私の義理の母です。私、中学生の時、その家に引き取られたんです。
あなたの言う、苦労知らずの…って言うのとは違いますよ。」

「なぜ、そんな小さな子を連れて離婚なんてしたの？
親の勝手で迷惑かけられる子供の気持ちにならないの？」

「悩みました。
娘が一番大切だから。」

「Aストップだ。」

将吉先生の声…こんなとこでやめれない。
この後にこの人の本音が…

「A！やめるんだ。
　約束だぞ。あとは俺がやる。」

将吉先生に強めに言われて、椅子に座った。

「お願いします…。」

その後はあまり覚えてないけど、今市先生が来て、別の部屋に連れてこられて…

「A先生…医師としてはやめて欲しいです。
このままだと、今までの治療がだめになります。
１からやリ直しなんて、それこそ心にかかる負担が大きすぎる。」

そう言えば…右腕が痛い。
無いはずの部分が痛い…。
痛いはずはないから、これは心の叫びだって言われてる…。

すごく悔しい。
私はまだ過去に囚われてる。
とても幸せにしてもらってるのに、心を病んでるなんて…
哲也さんにも申し訳ない…。

「今市先生…、いつになったら治りますか？
私、変ですか？」

「違いますよ、心は時間がかかるんです。変じゃない。」

「将吉先生には、まだドクターストップかけないで下さい。
だめな時は、自分で言います。」

「わかりました。」

攻撃→←すれ違いざまの…

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