やっぱりお兄ちゃん3

お義父様来宅 ページ49

次の土曜日、お義父様が部屋に来た。

居心地悪そうにソファに座り、だけど
私を優しく見て

「体調悪くなったら言いなさい。
　それよりも…」

お父様は床に膝をついた

「本当に申し訳ない。
うちのがあなたにしたことは、
許されることではないです。」

と頭を下げた。

「あの、頭上げてください。
そんなことしてもらう為に、
お呼びしたんじゃないので…」

慌てて手をとった。
健一くんも

「親父、月子も言ってくれてるから、
座って。
話もできないだろ？」

お義父様はゆっくりと座った。

いつもはきっちりとスーツに身を包んだ紳士。
公認会計士のお義父様。
疲れの色が出て、御髪にも白いものが
目に見えて増えた。

心の中で思う。
なぜお義母様は来ないの？
謝るのはお義父様じゃない。
私は意地悪だろうか…。

「健一郎は、今すぐにでも自分が警察に
言うと言ってるんだけど、私としては
せめて、自首させたいと言うのが
あって…。」

とりあえず、あちらの話を聞こうと思った。

「月子さんは、なぜ警察で
あいつのことを…。」

「健一郎さんに、知って欲しくなかった
んです。
一時は、ひとりでずっと秘めていこう
かとも思ってたんです。
健一郎さんの笑顔を失いたくなかっ
た。
他の人に渡したくなかった。
やっと見つけた居場所を守りたかっ
た。
でも、体は正直で…日に日に悪くなっ
ていきました。」

「月…。」

健一くんは何も言えなくなってた。
お義父様も同じ。

「でも、知ってしまった今は、
離れるべきだと思ってます。
しばらくうちへ戻っていたのも、
そう考えたから。」

「月、それだけは嫌なんだ。
　こないだも話したよね？
　戻って来てくれたんだよね？」

「健一郎さんとは話しました。
一生忘れられないって。
それほど憎まれてる理由もわからない
からって。
ずっと私に負い目を持って生きてはい
けないし、いつかは疎ましくなって、
他の方に安らぎを求めて…
お義母様だって、そんな女が大事な一
人息子と暮らしてると考えるだけで憎
しみが増すでしょう？
学生の頃、何度浮気されても、何ヶ月
もほったらかされても、何も言わずに
健一郎さんを待てたのは、好きという
気持ちだけで…。
今回は、違います。
近いうちに出ていきます。」

「行かせない。」

健一くんの声に首を振った。

「誰かを憎んで生きて行くなんて、
お義母様も不幸です。」

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