負けてもいいよ３

これからのこと ページ10

無医村とは言っても
簡単じゃ無くて
Aの身体のことを考えると
ある程度の病院が近隣にある
ことが絶対でその病院まで
車を飛ばせば１時間以内で
行けること
ひまの行ける幼稚園があること
贅沢言えば海があれは最高かな？

なかなかそんないい場所は無くて
それでも粘り強く探そうと
思っていた。

調べものもあったから
今市先生のケアの時間Aを
お願いして院内の図書館に
来てた。

「病院辞めるのか？」
声をかけられた。
「地獄耳か？」
健一郎…治療は進んでいると
聞いてたけどあまり見たくない
顔だった。
Aの手前かっこつけたけど。
「人から聞いたから…」

「ここは忙しすぎるし、
　Aに仕事せたくないし。
　ひまももう少し静かな
　環境で育てたい。」
あいつには何も言えないだろう
聞きたくないし言わせない
「Aとは…」
「籍は入れるよ、ひまが幼稚園
　上がるまでにね。
　途中苗字が変わるのやだし
　いじめられても
　可愛そうだから。」

ホントはお前がしっかりしてれば
こんな話はしなくて良かったんだ。
「ごめんな…言葉が出ない。」

それが普通の人間の反応
だろうな。
治療進んでるんだな
もっと早く気づくべきだった。
ごめんな健一郎。

だけどもう静かにさせといて。
あれ以上あいつを傷つけたくない。
あの痛々しい姿お前もみただろ？

もうAから離れてくれ。

それからしばらくして
八木先生が健一郎を相手取って
裁判を起こすと聞いた。
良平も王子も負けは
わかっていても止めなかったと
聞いた。
止めても聞くような決意じゃ
なかったと聞いた。
それに
「勝ち負けじゃないんで。
　もし、クビならそう言って
　ください。
　ひとりでもやります。
　妻には許しもらってます。」
そこまで言われて
「クビ」
言えるような王子じゃないし
止めれる良平でもない。

ある日八木先生は
Aに逢いに来て…
本人にその話をした。

「先生…訴状下げてください。」
そう言ったAに
「いくらお前でも聞けない。
　勝ち負けでもお前のためでも
　ないんだ。
　オレがあの人を許せない
　それだけなんだ。」
それでもAは
健一郎の逃げ場を未来を
残してやってほしいと訴えた
「なら、お前の喉を
　噛み切っていく。」

育ての親の黒豹が
ハンターの喉を噛み切る…
今までじっと耐えてきた黒豹が
牙をむく
それは白獅子にはもうどうする
こともできないこと

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