負けてもいいよ３

三本足の白ライオン ページ5

時間を決めて数人なら
Aと会えるようになり
最初の日は王子と良平先生
そしてマスター(啓司さん)
が会った。
オレも待合までついていった
啓司さんは出てきたとき
必死に奥歯を噛み締めていた
拳を握って
あー目がかゆいなんて言って
持っていたハンカチで
涙をふいて上を見てた。
「人間ってすげーな。」
そう言って帰って行った。

王子はエクボで入っていき
涙でグシャグシャで出てきた。
「絶対泣かないって決めて
　いったんだけど、土田先生に
　助けられて座ってる姿見たら
　泣いちゃって…Aに
　頭撫でられた。反対だよな。」
そう言ってまた泣いた。
退院までには泣かないように
がんばる。
王子と入れ替わりで入っだ
良平先生は
「泣いてはいなかったが
　沈んだ瞳で、あれはきつい。
　将吉さん明日覚悟してけよ。」
そう言ってどっと疲れたように
ソファに座り込んだ。

次の日は意を決した
綾野のご両親が来てた。
出てきたときは思わず
手を貸すほど二人共
泣いておられて
特にお母さんは
「なんであの子ばかり
　ほんとに可愛そうな子。」
と泣き崩れていた。
お二人に帰りは送るから
待っているように伝え
オレはAと会った。

「将吉先生」
土田先生に支えられて
体を起こしているAに
弱々しい声で呼ばれて
近くに寄った。
右の手は無くて袖が縛られて
いた。奥歯を噛み締めた。
「なんだ？」
「ひまがお世話になって」
Aの頭にそっと手をおいた
「気にすんな、うちのやつ
　三人も四人も一緒よなんて
　言うんだ。それにひまちゃん
　お風呂入れるの癒しだ。」
「先生がお風呂に…。」
土田先生が言うから
「慣れてますから、オレ。」
と言うと
「赤ちゃんのときだけ
　特別に許します。」
と微妙な顔で言われた。
なんかこないだの面白くない
は撤回してあげよう。

「痛みは？」
「不思議なんですよ。
　夜とか無いはずの部分が
　痛むんです。
　あと痒いとかも。
　無いからかけなくて
　痛い〜痒い〜って
　哲也さんを困らせてます。」
そう言って二人で笑う。
笑ってるよ…この二人…

リカの話をすると
「よかった。リカさんも前に
　歩き出せたんですね。」
優しい顔で笑ってる。
Aは怒りや不満を
腕と一緒に無くしたみたいだ。
Aが先生を見て笑うと
先生も顔を近づけて笑う
この夫婦いいなって思った。
うちより凄いなって思える
夫婦初めてみた。悔しい。
まだ夫婦じゃないけどな。

魔王は眠る→←魔女は変われる

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す