いつでもお兄ちゃん 3

淋しいな… ページ49

ノブさんは、またお店に来てくれるようになった。
ホッとしてる。
私のせいで、常連さんがひとり来なくなったなんて、困るから。
まだまだ絵美ちゃんは子育てしてもらいたいし、私もなにかみんなの為にしたい。

ライブ最終公演が終わっても、将ちゃんには、今回休みはないらしい。
地方の番組出たり、次のアルバムの曲作りに入ったり、他にも雑誌の撮影や色々で

「帰れない日が増えちゃうかも。
せっかく一緒に暮らせるようになったのに、ごめんね。」

「ううん、将ちゃんが忙しいのは、人気のある証拠だもん。
頑張ってきて、応援してるよ。」

そう、人気のある証拠。
音楽も受け入れられて、ルックスも最近すごくカッコよくなって…だから…いいことで…

…さみしいな。
時計の針の音がやけに大きく聞こえた。

「なんであんな女がSHOKICHIの彼女なんたろうね。」
「もっと、きれいな感じの人かと思った。
すごい地味じゃね？
不幸一手に引き受けましたみたいな。」
「ムカつく、消えればいいのに。」

そう、ファンの方からしたら、私は嫌われもので、イベントや撮影見に行ったりも、事務所の人から止められてる。

救いは、将ちゃんの気持ちが、私にあること。
それだけを信じて頑張るけど…

さみしいな…。
みんながいてくれても、違うもん。

でも、将ちゃんはボロボロの独りぼっちの私を救ってくれた。
真夏の暑い中、お母さんを担いで、病院に行ってくれた。
お葬式も、いろんな手続きも、みんなしてくれた。

だから、私も頑張るんだ。
いつかまた、一緒にどこかに行ける日が来る。
独り占めできる時間も来る。

みをちゃんは、愁平さんがお祖母様のところでお勉強してた時、待ってた。
雪花ちゃんは、哲也さんが学生の間は、待ってた。
月ちゃんは、健一さんが遊んてるとき、待ってた。

今は幸せそうなみんなにも、辛いときはあったんだ。
こんな素敵なマンションに住まわせてくれて、遅い時間でも、帰れる日は帰ってきてくれて、毎日殴られて暮らしていた頃から見たら、天国だよ。

殴られて、お金は全部取られて、ご飯もあまり食べれずに、だけどお母さんを看てあげたくて…誰も助けてくれなかった。
遠巻きに見て、ヒソヒソ話してるだけで、文句は言っても、助けてはくれなかった。
お役所とかでさえ…なんだかんだと逃げた。

でも、将ちゃんは真っ直ぐど真ん中に入り込んできて、救ってくれた。

あの頃に戻れたらいいのに…。
なんて思っちゃいけない…よね。

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