いつでもお兄ちゃん 3

お祖母様の教え ページ5

「費用は払うので、その１０日間を3回買えば、ひと月ですよね？
それを1年間続けるのは？」

「無理やと思います。
うちのお預かりの条件は、介護者の為の旅行や、体験などのコース利用者の方だけのプランという事なんです。

１０日のプランだと、海外旅行や、陶芸制作体験、ログハウス制作等費用もかかります。
なので、それを月に３回利用するとして、ひと月で百万以上の出費ですから…。」

山下さんが事務的に説明してくれた。
淡々と、抑揚なく話すその感じは、すこぶる冷たい。
普段の楽しくて優しい山下さんからは、想像できない。

時々、そんな申しではある。
富裕層の連中に多い。
何でも金で方がつくと思ってる。

「それに、参加者、つまりは如月さん本人はプランに参加せずに、日常生活をするんですよね？
それをお受けしたら、ここは、姥捨山になってしまう。
それは、僕の考えた施設とは遠くかけ離れたものです。
受け入れることはできません。」

「なにか、方法はないですか？
お願いします、助けてくださいませんか？」

「無認可の民間施設なら無くはないですが、環境や、入所者への態度が酷いところばかりです。
あくまでも、金儲けの手段というだけですから、ヘルパーの人数も足りませんし、管理するものもいないので、アルバイトの人も横柄になるんです。
お勧めてきませんし、利用しないでください。」
　
「…そうですか。
解りました。
考えてくださって、ありがとうございます。」

如月は俯いて立ち上がった。
瞳が潤んでいる。

この涙に負けちゃだめだ！
みお、いっくん、俺はお前たちを愛してる！
(๑•̀ㅂ•́)و✧

「如月さんのお勤めになっている病院はどちらですか？
言いづらいのでしたら、こちらから事務的に、お願いすることもできますよ。
もちろん、費用は頂きます。」

「あ、あの、自分で一度頼んでみます。
それでもだめなら、また来てもいいですか？
野替さんしか、相談できる方がいなくて…。」

「その時は、仕事としてお手伝いしますね。
お力になれず、申し訳ありませんでした。」

如月が廊下に出て、ホッとした時

「奥様と、息子さんは、お元気ですか？
よろしくお伝えください。」

そう言った如月の表情が、一瞬めちゃ怖かった。
山下さんも気づいてない、ほんの一瞬のこの女の本当の顔だ。

「よく、相手を見ることだよ。
油断したときや、一瞬のスキができた時に出る本音をだよ。」

お祖母様の言葉を思い出していた。

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