いつでもお兄ちゃん 3

蒼のヒーロー ページ36

「次あれ乗りたい！」

蒼が指差したのは話題のジェットコースター。

「あれはまだ乗れないよ。
もう少し、お兄さんになったらね。
それにお母さんも乗れない。」

「なんで？」

「怖いもん。
見て、降りてきた人こわーいって言ってるよ。」

「じゃあね〜、あれは？」

またまた絶叫系。
しかも蒼も乗れる…。

「僕、ひとりで乗ってくるから、お母さん見てて。」

「だめよ、また痛い思いするよ。
お父さんと約束したよね？」

「乗りたい！
これは僕でも乗れるよ！
お母さん僕の言うこと聞いてくれるって言った。
嘘つきなの？
お母さんいつも嘘ついちゃだめって言うのに。」

「とうしよう…三半規管弱いんだよね…。」

「蒼、聞いて。
お母さんね…」

蒼に視線を合わせて話しだしたら声がかかった。

「俺が乗ってやるよ。」

「あ！カッコイイお兄ちゃんだ！」

岩田が立ってた。
なんでここに？！
まさかつけてた？？
蒼を引き寄せた。

「何もしないよ。
ここもうちの傘下に入ってんの。
新しいマシンの業者と打ち合わせしてたら、坊主が見えたから来たの。」

「でも、乗ってもらわなくていいですから。
蒼、行くよ。」

でも、蒼が動かない。
乗れる人を見つけたから、動かない。
それも蒼の中ではヒーローのカッコイイお兄ちゃんに…。

「自分の体張って助けた子供を、どうこうしようなんて、思ってねーよ。
載せてやれよ。
幼稚園とか休ませてんだろ？
可愛そーたろ。
坊主、行くぞ。」

「僕、蒼だよ！
黒沢蒼っていうんだよ。」

「じゃあ、蒼、泣くなよ、怖いぞ。」

「泣かないよ！
僕お母さんを守らなきゃいけないから、泣いたりしないよ。」

蒼が岩田に駆け寄る。

「蒼！だめでしょ！」

すると岩田が

「じゃあさ、これ、お母さんに預けるから、必ずここに蒼君と帰るから、持っててよ。」

キーケースだった。

「困ります！」

「俺も困るの、それないと。
車も、部屋も、何なら社長室の金庫もそこに鍵ついてんの。
だから、必ず帰ってくる証拠ね。
流石にそれは月子ちゃんとも交換できないから。」

そう言うと、蒼の手を引いて、チケット売り場に行ってしまう。
1秒たりとも見逃さないと、目を凝らして見てたら、普通にチケットを買って、蒼と手を繋いで列に並んでる。

近くにあったベンチに座って、念の為二人の写真を撮った。

平日でも、その乗り物は新しくできたらしく、結構人が並んでる。
列に並んでから15分、蒼と岩田の乗り込んだ車両が動き出した。

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