いつでもお兄ちゃん 3

見られてた ページ19

映画は人気で、結構な期間上映しているのに、まだかなり人かいた。

受付にチケットを出すと。
どのあたりのお席がいいですか？と聞かれたから、動きやすいように、端っこの通路側を指定した。
真ん中あたりから混み始めるから、すぐに席は取れた。

部屋の中に入って席につくと、将ちゃんの歌声が聞こえる。
普段隣で聞いてるのに、なんだか違う声。
嬉しくなってひとりでにやけた。

映画の前の映像が流れ出して、照明が落ちた頃に、１つ内側、隣の席の人が入ってきた。
背の高い男性だ。
本編が始まったから、それに集中した。

中々怖い…(*_*;
じわじわ怖いやつだ。
ホラーは平気な方だけど…。
やっぱりDVDで家で見ればよかった(；^ω^)
でも、立ち上がろうとすると流れる劇中歌、将ちゃんの声。

結局最後エンドロールの将ちゃんの名前を得意気にでも、しっかり目に焼き付けた。

照明がついて初めて気づいた。
隣の人…

「結構怖かったね。」

ノブさんだった。

「退屈だから、一人で見に来たら、愛ちゃんいるんだもん。」

これが、誘いは断ったけど、行った先で出会ったってこと？

「帰り道も、同じ方向だから結局並んで話しながら帰る。

「あの映画の曲いいよね。
日本のってあまり聞かないけど、あの人の歌は聞いてみたくなった。」

飛び跳ねて喜びたいのにできない。
SHOKICHIっていうんですよ。
アルバム出てますよ。
私の彼なんです！
たくさんあるのになぁ…。

「あれ？とうした？
いつもの元気がないね。
もしかして、怖すぎて？」

「違います〜。」

結局、マンション近くまで来て、別れた。
今夜は将ちゃん遅いんだよね…。
映画のことも、岩田の資金のことで、落ちてたから、話さないでおこう…。

その夜、絵美ちゃんから電話がかかってきた。
珍しい、何かあったのかなって思って出ると

「愛ちゃん、今いい？」

「うん、どおしたの？」

「今日、お客さんと歩いてるの見かけたから…
別に構わないんだけどね…変に取らないで。」

「うん、偶然出先で会ってね。
常連さんで、良くしてもらうから。
ても、別に何ってわけでもなくて…。
ごめんなさい。」

「ううん、謝らなくていいの。
怒ってるとか、注意してるとかじゃないよ。
なんとなく気にかかったからなんだ。
なんにもないならいいの。
じゃあまた明日お店でね、バイバイ。」

そっか、絵美ちゃん見てたんだ…。
なんにも疚しくないのに、なんでこんな気持ちになるんだろ。

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