勇者だなんて聞いてないっ！

兵士なのか勇者なのか ページ7

「おい、止まれ」
すると、ギルドの長らしき人物が出てきて
「何だ貴様……って、お前」
「何ですか」
「勇者じゃねえかよ！……この国の最弱兵士でもあるけどな」

長の言葉に
「え、ガルディアで最弱？マジで？」
「なのに何で追いついたし」
次々となんかめちゃくちゃ言われる。解せぬ。

「いや、俺一応兵士だから。最弱とか関係なく、取り締まりは仕事だし」
近づこうとすると、
「近づくと刺すぞ！」
どう見ても、俺が今持っている短剣じゃ応戦できないほど幅の広い剣をちらつかせる。
「え、刺さないで俺戦えないから」

俺が慌てて言うと
「アレクさん、そんなんじゃだめですよ。僕が相手しますから」
フェンリルが出てきて、盗賊ギルドのやつらに言った。
「僕に潰されたいのなら来てください」

フェンリルが闘争心を解放したからか、あたりはすごい緊迫した空気に包まれた。
それもそうだろう、フェンリルの闘争心は周りの草花が揺れるほどだし。

「わ、悪かったって……ほら、全部返すから」
「そうじゃないんですよ」
フェンリルは決して怒鳴らない。
なのに迫力がすごい……盗賊ギルド、まさに蛇に睨まれた蛙。

「いや、フェンリルありがとう」
「いえいえ、お役に立てて幸いです」
フェンリルがにらみを利かせている間に、俺は盗賊ギルドのやつらを片っ端からロープで縛った。
後は近くの見回り兵士にお願いした。

「ちょっと勇者」
呆れた声でミシェルが俺を呼ぶ。
「何だよ箱入り娘」
「あたしは箱入り娘ってほどじゃないわよ！」
そ、そうなのか……？
金持ちの娘って、箱入り娘じゃねえの……？

「フェンリルに頼ってばっかじゃあ、この先成長しないわよ」
「い、いやそれは……」
言っていることはもっともでございます……と言いたいところだが、さすがにプライドが傷つくわ。
「スライム一匹くらいは自力で倒しなさいよ」
「無理に決まってんだろ！」
「何でよ、あんなの炎でどうにかなるじゃない！」
こいつ、致命的なことを忘れているな……。

「冷静に言うぞ？俺は今、レベル一だ」






沈黙が痛い。
そう思って黙っていると、大声でミシェルが叫ぶ。





「はぁ？弱っ！」

死亡フラグ……？→←ミシェル

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