しろのかさ ページ23
下駄箱から靴を取り出して
柔らかくなって少し底がすり減ったローファーを
かかとをトントンしながら履く
履き終わってさぁ歩き出そうと前を向けば
パラパラと音を立てて降り始めた雨。
さっきまでの晴れが嘘のように
空の色も地面の色も違う色に塗り替えていく
うわ、最悪。傘もってきてない
意を決してタオルを頭に被って雨の中へ
シャツの中に雨が染み込んでいく
スカートもバックも全てを冷たく包んでいく
7時間も授業を受れば、走る気力も残っていなくて
駅までの辛抱だと、とぼとぼと歩く
赤信号に当たって、本当についてないなぁって…
雨足は強くなるばかり。気分も下がるばかり。
雨が止んで上を向けば
肩で息をしながら傘を傾ける幼馴染のまふくん。
「ばか!!」
『え?』
「ん、行くよ」
突然の暴言に戸惑っていれば
青信号にちょうど変わって、手を引かれる
アーケードがある商店街の中に入って
くぐもった雨音がアーケードの上で飛び跳ねて
軽快なリズムを奏でる
雨にはもう当たらない場所なのに、
まふくんはまだ足を止めずに駅へと早足で進む
『ちょ、ちょっとまってまふくん』
わたしの声に振り向いた彼は
一瞬こっちに目を向けたあと顔を背けた
後ろからでも見える少し赤い耳
「ぁあああ!!もう、これ着てはやく」
がばっと被せられたブレザーに
まふくんの柔軟剤やら香水やらの香りがして
何処か少し懐かしい
感傷に浸っていればデコピンされた
「ねぇ、着るの遅い、っていうか女の子なんだから少しは気にしてよ…」
『ぅ、ごめん』
♡
後ろ姿でもわかるあの黒髪
水も滴るいい女とは言うがあれは滴りすぎ
そんな変なツッコミを脳内でくりひろげながら
急いでその背中を追う
やっと追いついて傘の中に入れらば
ぽかんと口を開けてびっくりするA
見ないようには気をつけるけど
色気が溢れている黒のそれがブラウスから透けていて
目がチカチカする
でも愛おしくてたまらなくて
ブレザーを渡して少し注意すればしゅんとして
可愛くてたまらなくて
今すぐ家に連れ去りたいこの気持ちを隠して隠して
また、駅までの道を歩いた
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