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第壱百拾参話 ページ13

スタインベックは全身の痛みすら忘れてそれに見入っていた。

凡ては目の前に広がる、あまりにも現実離れした光景の為だ。


「何だ、あれは……」


穿つ大地。吹き荒れる風。

随分と様変わりした相棒を前に、先刻自身を蹴り飛ばした男と捕らえていた少女が対峙している。

だが、今の彼等はあまりにも人間の姿からかけ離れていた。


「知りたいかい、組合の働き蟻君」
「!」


その様相に見入っていたスタインベックは肩に置かれた手と頸に突きつけられた短刀(ナイフ)に、ようやくもう一人の男に気が付く。


「あれが二人の異能の本当の姿だよ」


Aも、そして中也も。
其処に今、人間の姿をした者はいなかった。

中也は全身に赤黒い異能痕を纏い、歩み一つで地面を砕く。
異形の躰を容易く削り取る破壊力は太宰の記憶と何ら違いない。

周囲の重力子を操る『汚濁』の力は地をも揺るがす。

もっとも、制御は出来ず、力を使い果たして死ぬまで暴れ続ける事になるのだが。



それにしても、と。
太宰は奇怪な事実に嘆息した。

目の前の戦場には中也とAの異能が入り乱れ、吹き荒れる。


片や血の気の多いマフィアの男に、片や大人しい探偵社の少女。

太宰の知る二人はまるで似ても似つかない。異能だってそうだ。



漆黒に淀む渦と、白光に澄む風。

轟く咆哮と、透明な歌声。

破壊と、守護。



何もかも、あまりに違いすぎる。



なのに、あまりに強大過ぎるその力は酷く似通って見えた。



「『汚濁』と正反対にして全く同じ、か……。なら、差し詰め彼女の力は『清澄』といったところかな」



汚濁と清澄。


全く異なる同じ力は混ざり合い、戦場を飲み込んでいった。

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 文スト , 中原中也   
作品ジャンル:恋愛
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雪白(プロフ) - 雪さん» コメントくださりありがとうございます。そのように仰って頂けて大変嬉しいです。ただ、現時点ではあまり続編を書く予定はありませんね…。ご期待に沿えず申し訳ございません。拙い作品ですが、最後まで読んでくださり本当にありがとうございました。 (7月5日 17時) (レス) id: a24e144b4a (このIDを非表示/違反報告)
- とっても素敵な話をありがとございます🌸話の流れからしてこれで完結のようですが、死の家の鼠編やそれ以降の話はやったりしないのですか? (7月3日 14時) (レス) @page34 id: 685216d62e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雪白 | 作成日時:2023年2月25日 9時

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