オトナリサン２ (ページ25)

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モヤモヤとした気持ちは晴れることは無くて、講義を受けてる最中も、友達とカフェで話してる時もいつだって頭の片隅には平野さんが居た。

バイトへと向かう友人と別れて、今夜のご飯の材料を適当に買うと私は帰路につく。

エレベーターから一歩足を踏み出すと、前方から真っ黒な服とサングラスに身を包んだ男性が歩いて来ていた。

＿＿＿トクン、と胸が小さく鳴る。

「＿＿あ、Aさん。お疲れ、今帰り？」

『…はい、大学帰りです』

「そうなんだ、俺は今からレッスンです」

夜は長いよ〜なんて笑いながらサングラスを外して、前髪をサラリと掻き分ける仕草にまた胸が鳴る。

今までは気にしても無かった彼の1つ1つの仕草にや言葉を気に留めてしまう、なんてこった。

「12月にさ舞台決まって、それに向けてちょっとずつ稽古が始まるんだよね。だからまたしばらくAさんに会えない」

『そ、そうなんですか。頑張ってくださいね、体調とか気を付けて「寂しいって言ってくれないの？」』

被せるように発せられた言葉は、また私の胸を苦しくさせた。