不器用 ページ2
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「またゼロが1位かよ!」
掲示板に張り出された、試験の成績表の1番上を見た松田がニヤニヤしながら大声で言った。
「科目別でも全部1位。流石だな、ゼロ。」
「ハハハ、今日はまたご馳走だな。」
「よっしゃあ!ヒロ、唐揚げ作ってくれよ!あれウマいんだよなー!」
「陣平ちゃん、ゼロが苦しがってるよ、とりあえずおめでとう!」
降谷と肩を組む松田の声を聞いて、景光と伊達、そして萩原も降谷に笑いかけた。
しかし、トップを取ったはずの降谷は、曖昧な表情を浮べた。
「どうしたんだ?微妙な表情だが…嬉しくないのか?」
こういうことには特に鋭い伊達が尋ねた。
彼は人一倍周りを見ており、気遣ってくれるため、教官や生徒たちから頼られている。
「いや、嬉しいんだ。だけど、佐伯に点差を縮められてるから、次回は気をつけないとな。」
降谷がそう言うので、一同は1位の降谷と3位の伊達の名前との間を見た。
「…2位 佐伯A。ゼロと1点差だな」
「拳銃以外は同率か。」
上位には、男の名前がつらつらと並んでいる中、たった一人、女の名前が入ってることに、伊達と諸伏は口をあんぐりと開けた。
「あの子、中学ん時から優秀だったからね」
彼らとは対照的に、納得している様子なのは萩原だ。
一方、松田はそれが気に入らない様子だ。
「成績優秀。おまけに運動神経も抜群。さらに性格も良いときた。オレみたいな素行の悪い問題児とは正反対だったよ。」
松田はくせっ毛の頭を掻きながら、「ほら、アイツだ」と、顎である方向を指した。
彼が指す方には、1番前で成績表を見つめるAの姿があった。
彼女の顔には、喜怒哀楽のどれも当てはまらない、無の表情が浮かんでいた。
「Aちゃーん!」
彼女とは親しいのか、萩原が名前を呼んだ。
「ちょ、萩!呼ぶなって!オレがアイツのこと苦手なの知ってるだろ!?」
焦る松田に構わず、萩原はこちらへ来たAに話しかけた。
「Aちゃん、試験2位おめでとう!」
「…でも、拳銃が…」
朗らかに言う萩原とは対照的に、Aは残念そうな顔をした。
残念そうな顔と言っても、彼女の表情はほとんど変わっていないように見えるのだが。
「…コイツ、表情筋をピクリとも動かさねぇし、真面目だからオレとは性が合わないんだよ」
降谷たちにそう耳打ちをした松田は、逃げるように去っていった。
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作者名:つむぎ | 作成日時:2019年7月29日 0時