呪霊か鬼か【鬼滅の刃】【呪術廻戦】

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(寝たのか？)


お館様の屋敷からの帰り道、急に静かになったため心配になりAを見ると、気持ち良さそうに寝ていた。

行きの時よりもスピードを落とし駆けていたせいか、二度目の慣れか定かではないが、随分安心しきっているように見えた。



(Aか…。)



杏寿郎は腕の中で安心しきって眠っているAのことを思う。



(まだAのことを知ってから、数日しか経っていないんだな。色々なことがありすぎて、旧来からの知人のような感覚になっていた。)



自分の命を救ってくれたこと、父を立ち直らせてくれたこと、母に会わせてくれたこと、そして真っ直ぐ見つめてくる空色の瞳。


昨日の夜のことを思い出す。
無理をさせてしまったのではないかと心配になり居ても立っても居られなく、部屋の様子を見に来てみると、縁側で佇むAを見て息を呑んだ。

月明かりに照らされたAは綺麗で、とても儚く見えた。

もう少し見ていたい。


しかし、その瞬間、現実に引き戻された。

「悟」

Aの兄であることを忘れて、ふいに出た男の名前に心が締め付けられた。

時既に遅し、頭で考えるよりも先に、話しかけていた。

母に会えた喜びと、寂しさから、心の奥底にいた弱音を吐いてしまった。

元の場所に戻れるかどうかもわからない、不安に押し潰されそうになっているだろうに、それでも側にいる、と言ってくれたAが愛おしかった。

無意識のうちに抱き締めてしまいそうになったが、知り合ってまだ日が浅い。
そこは努めて冷静を装った。

少しずつAのことを知っていこう。
それからでも遅くない。
自分に言い聞かせて。







(ほんとに良く寝るな)

腕の中で眠るAが起きないように、強く、そして優しく抱き締めた。

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