研究員はポアロにいる

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｢ふぅ…なんとか終わった…｣




印鑑を押した書類の束を後輩へと乱雑にパスして背伸びをすれば、長時間のデスクワークのせいで若い女性の身体とは思えない音が鳴った。


夕方5時半。
いつも通りに定時の放送が流れた。




｢センパイ！お先に失礼します！｣


｢はいはい、楽しんでね｣




パタパタと忙しなく帰ってゆく後輩の背中を見送る。


前々から聞いていたが、今日は彼女との記念日らしい。




｢恋人ねぇ…｣




Aは、エスカレーター式の学校に通っていた上に、ガリ勉体質だったため、色恋沙汰の話は苦手だ。


後輩の顔は整っており、前に彼女の写真を見せてもらったことがあるが、彼女もまた沖野ヨーコ似の美人だった。


ふとそんなことを思い出しながら、愛車のVTR250に跨って走らせていると、とあるレストランにパトカーが止まっており、なにやら騒がしい。


その人混みの中に見慣れた顔が1人＿＿＿




｢高木さん！｣




そう呼びかければ、振り返った高木は警視庁 刑事部の巡査部長である。


交通課の由美から聞いた話だが、交通課ではなかなかの人気らしい。




｢Aさん、お久しぶりですね！仕事帰りですか？｣


｢そんなところです。…何か事件ですか？｣


｢ええ…車が爆発して、毛利さんの同級生の婚約者が1人…｣




｢毛利さん｣ という、死神召喚ワードが聞こえた途端、後ろから可愛らしい声でAの名が呼ばれた。


振り返れば、コナンがニコニコ笑顔で立っていた。






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