The Road～光と影の詩～【オリジナル】 (ページ32)

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♯27 重なる声ページ32

「皆、今日は絶ッ対優勝しようね!」

カラフルな色のチョークで『1年2組絶対優勝!!』と書かれた黒板をバックに、美名が声を張り上げて言った。

この前聞いてしまった女子の言葉が少し引っかかったが、今日は集中するしかない。

「いろんなことがあったが、今日は練習の成果を存分に発揮しましょう!」

と中嶋先生。

＊

ステージに上がり、アナウンスが入った。

生徒や保護者の目がいっせいにこちらを向き、指揮者の市原(いちはら)が腕を挙げる。
最初はヘラヘラしてたけど、練習頑張ってたな。

ピアノの伴奏が入り、４拍目の指揮に合わせて息を吸う。

出だしは優しく、慌てずに。

ハーモニーを大切に。

クレッシェンドでサビに向かって段々と盛り上げる。

2番の出だしはメインの男子パートをよく聴いて。

そして周りの音もよく聴いて、

歌詞の意味を噛み締め、

ついにラストスパートの転調。

曲の中で1番盛り上げ、感動のフィナーレ。

ピアノが終わり、指揮も終わる。

指揮者が一礼し、拍手が起きた。

夢でも見ていたのかと思うほど、あっという間に終わっていた。

自分の席に戻り、他のクラスの合唱を聴いた。

やはり3年生の合唱は格が違った。

＊

ついに結果発表。
音楽の先生が学年の中でトップだった曲を流して最優秀賞を発表するのが毎年恒例らしい。

女子が皆、下を向きながら必死に祈っていた。
私も気づいたらそうしていた。

ラジカセから流れた曲は･･･

「「キャーーーーーーーーーーッ!!!!」」

この黄色く甲高い歓声は、私達のものではなかった。
最優秀賞は、実輝やリクトの3組の曲、「怪獣のバラード」だった。

吹奏楽コンクールで金賞を逃した先輩の悔しさがよくわかった気がした。

3組の女子がまだ騒いでいる。

「っせーな」

「あの声」がまたしても聞こえた。

＊

教室に戻るなり、ほとんどの女子が泣き出した。
それに対し、やはり男子は普通だった。

私ももちろん悔しかったが、涙は出なかった。
来年こそ勝てるという気持ちが勝っていたのだろうか。

それともまさか･･･

練習の過程で一部の女子に不信感を抱き始めたのだろうか？

「ちぇっ、出たよ女特有のこういう『私頑張ったんだからねアピール』。正直
『こういうの、目障りなんだよ!』」

ハッ、
ついにあの声が口から漏れ出てしまった。
私は慌てて口を抑えたが、幸い誰にも聞こえてなかったようだ。

じわりじわりと、私の中の何かが侵食されていく。