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♯10 寒さの中の熱さ ページ14

寒い。
やっぱり2月となると、寒さが一段と厳しくなる。
そして水が、すごく冷たい。

何故私がこうして水を触らなきゃいけないかと言うと、バレンタインのチョコをつくっているからだ。

そう、私は決めたのだ。今年こそ本命チョコをわたすのだ と。
味の方は、友チョコづくりで慣れているから自信があるのだが、

『何て書こう・・・』

問題はメッセージだ。口頭が無理なら、せめて文字で表さなくては。

『っきゃああああ無理無理無理!!』

「A、何を1人で騒いでるの!?」

『あ、何でもないよお母さん・・・』

うーん、「ずっと前から好きでした」で良いかな。でも・・・

『わあああああやっぱり恥ずかしい!!』

「あんた、さっきから大丈夫?」

『大丈夫です!多分!!』

「ところでさっきから何してるの?」

慌ててメッセージカードを隠した。

『あの、メッセージ書いてるんだよ!友達に!』

「ふうん・・・」

ようやく部屋を出てくれた。さて、続き続き!

あくまでも文字を書くだけだからな、私!
作文じゃないんだからそんなに時間かけてらんない!

30分後・・・

『やっと書けた!!』

さあ、後は明日どんなタイミングで渡すかが問題だ。
教室で堂々と渡すのは論外だし、帰り際に渡すのもリスクが大きいし・・・

『そうだ・・・!』



『矢守くん・・・これ読んで』

さりげなく、一枚の紙切れを渡した。

「え、あ、ありがとう・・・なになに」

"放課後体育館裏にて待つ"

「えぇ!?僕何かした?」


放課後、帰りのあいさつが終わるやいなや急いで体育館裏へ向かった。
心臓の音がうるさい。誰にもバレないようにしなくては。

「僕何かしたかな・・・」

心臓の音がいっそう大きくなる。

「あ、御咲さん!あの、僕何かした・・・」

響がそう言い終わらないうちに、チョコの入った箱をずいっと差し出した。顔がすごく熱い。


『あ、あの・・・これ、バレンタインチョコ・・・』

恥ずかしくてどうしても目を合わせられない。
響がそっとチョコを受け取った。少しだけ、手が触れた気がした。

「ありがとう!いきなり体育館裏とかいうから、最初すごくびっくりしたよ」

『ゴメン、それしか手段が思いつかなくて・・・えへへ』

「・・・そっか。じゃあ、また明日!」

『うん、バイバイ!』

響を見送った後、急いで由花と玲夜のもとへ向かった。

『ゴメン、ちょっと用事があって・・・』

この時2人は全てを察していたが、黙っておいた。 〜♯10寒さの中の熱さEND〜

♯11 夢じゃない→←♯9 学期末


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作者名:夜桜音羽 | 作成日時:2015年6月28日 18時

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