request ページ8
それは、紅い薔薇のシーリングワックスが付いた手紙だった。
郵便屋さんの田中さんが 英国からなんて、珍しいですね。と笑って渡してくれたものだ。送り主は一人しかいない。
「…Arthur・Kirkland。親愛なるAへ、かぁ」
封を切って取り出した手紙には、男性の文字とは思えないような綺麗でちまちまとした字が並んでいた。
「お前にはがっかりだ。いくらお前でも俺にだって許せないこともある。それだけは分かってくれ。嗚呼、でもお前のことが嫌いになったわけじゃない。そこは安心してくれて構わないが、あの話し方だとお前の友好関係が不安だ。 イギリスより愛をこめて。」
高い金をかけて送ってくる手紙にしては短く、素っ気なかった。
「なーにが、イギリスより愛をこめて。なんだろうねぇ…」
深緑色の縁どりがされた便箋を鼻に当てた。息を吸い込むと紅茶の匂いと、雨の匂いが混じったような匂いがした。それと、彼の愛用しているダビドフのクールウォーターの匂いも微かに香る。
電話、してみようかな。なんてスマホに手をかけた。
しばらく呼び出し音が続くと、眠たそうな声が聞こえた。あっちはまだ朝8時だ。
「もしもし、誰だ朝早く」
「…私、ごめん急に」
「あぁ…A、あれは俺からの忠告だと思ってくれ。あと…」
その後も続きそうな文句を無理やり遮って口を開く。
「アーサー、ごめんね。」
「あ?」
「だから、私の我儘から始まったから…」
「いや…俺も、悪かったっていうか…別に、お前の未熟さに怒っただけで…」
「ふふ、やっぱりアーサーに会いたいなぁ」
「なんだよ突然…でも、来る時は連絡しろよな、色々とこっちにだって準備があるんだ」
電話口の向こう側で照れたように顔を顰める彼の姿が容易に想像できる。
「うん、ありがとう。あと、アーサー、愛してるよ。」
日本より愛をこめて。
**
thx→てい さま。
仲直りから脱線しました…すみません。リベンジします。
45人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
路(プロフ) - 藤子さん» めちゃめちゃ読んでるね…ありがとう… あれね…神話理解してないと分からないかなって思いながら書いてたんだけどご理解頂けて嬉しいです。へへへ、その言葉めちゃめちゃ嬉しい (2018年8月31日 7時) (レス) id: fae735e792 (このIDを非表示/違反報告)
藤子(プロフ) - 今アイス君のお話(パンドラのやつ)読み返してて、やっと全てが繋がりました…。路ちゃんの作品はやっぱり、読み込めば読み込む程取り込まれる作品だね!! (2018年8月31日 1時) (レス) id: 0149d3e70e (このIDを非表示/違反報告)
路(プロフ) - ユティカさん» 早速見てくださってありがとうございます!神なんか!そんな畏れ多い… 模試でしたか!頑張ってください! (2018年8月26日 8時) (レス) id: fae735e792 (このIDを非表示/違反報告)
ユティカ - あぁもう…神ですか!?あなた様は神様ですか!?すっごいすきです…!これから模試なんだけどすっごいやる気出ましたぁあ…!ありがとうございます! (2018年8月26日 7時) (レス) id: 75a1a6830c (このIDを非表示/違反報告)
路(プロフ) - ユティカさん» コメントありがとうございます。文体が好き…めちゃめちゃ嬉しいです。 リクエスト!!カナダくん!久しぶりだ…、頑張ります。 (2018年8月24日 22時) (レス) id: fae735e792 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:路 | 作成日時:2018年8月15日 20時