[短篇] In The New World IV [APH]

France ページ14

国は母だ。
誰かがそう言った。

それなら、さしずめ国民は子供と言ったところだろうか。
誰かがそう言った。

｢母ならもっと包み込んでくれるはずよ｣

｢ふふ、Aちゃんたら厳しい〜｣

｢仕方ないでしょう。そんな馬鹿みたいな事言った人間がいるんだもの。そりゃ怒りたくもなるわよ。｣

グジェールをつまみながら白ワインのグラスを口につけた。
顔を顰めた彼女はぐちぐちと 国は母だ。 という言葉について文句を言い連ねる。

｢まぁまぁ、お兄さんは母でも良いし、いいんじゃない？｣

｢母でいいの？！ママよママ！私はフランスさんのことママだと思ったことなんか無いわ！｣

｢じゃあ、なんだと思ってるの？｣

｢…お兄さんとか、アイドルだと思ってる｣

｢うふふ、アイドルかぁ｣

馬鹿にするなとでも言いたげな目がギロリと俺を捉えて離さない。

｢偶像崇拝とかそんなのじゃなくて、憧れなの。貴方のように美しく、儚く生きていたいの｣

｢…Aちゃんは充分美しい、っていうか魅力があるから大丈夫じゃない？｣

｢そんなん、フランスさんしか言ってくれないわよ｣

｢へぇ…｣

長い黒髪が彼女の胸に垂れる。
恥ずかしそうに顔を背けて、決して俺の顔を見ようとはしないのだ。


｢でも、Aちゃん。君は本当に美しくてお兄さん目が離せないよ｣

彼女の横顔が一瞬、緩んだ気がした。

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