[短篇] In The New World IV [APH]

France ページ11

海へ行こうよ
今夜。

｢…は？｣

電球の柔らかく照らす部屋の中で彼はそう口を開いた。"明日じゃもう手後れになる"と。

｢だから海へ行こうよ｣

失恋した私に冷たく言葉を投げる。"温かい毛布も、とっくにあなたを温めてはくれないんだから"。

｢…わかったよ、行こう｣

｢いつか人は消えるのに、お前はどうやって知るの？不安以外の気持ちは全てはつくりものさ｣

オープンカーのハンドルに手をかけ、"それでなにがいけないのさ"、なんて歌うように笑った。ハイウェイを駆ける私たちの上を星が踊る。

｢フラン、なんで急に海になんか行きたいって言ったわけ？｣

｢海に行けば、Aの気も晴れるし、俺も悪夢を終わらせたいから、かなぁ。｣

風が荒れ狂っている。心臓も、風も轟々と鳴る。
着いたよ、なんてドアを開いた時には空は白みかけていた。

｢悪夢？｣

｢そうそう、その悪夢を終わらせに海に行くの｣

"海へいこうよ。って毎日同じことを唱えていれば、いつかそこで悪夢は終わるよ。"
白い砂浜に足跡を残し、ザブザブと彼の瞳に似た色の海の中に入っていく。
彼のターコイズブルーみたいな瞳が優しく、歪んだ。

｢…本当のきもちなんて、誰も知らないはずさ。みんなが知っているもの全てがつくりものだよ。｣

｢Aちゃん、何？｣

｢フランのことが好きだよ。｣

膝まで海に浸かった彼は振り向いて薄く笑う。

｢…やだ、おにーさん照れちゃうなぁ｣

｢だから、私と一緒に悪夢を終わらせようよ｣

あなたと一緒なら、悪夢だってなんだって終わらせられるよ。



______ 溺 。 ______

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