かけがえのある世界。【灼熱カバディ】 (ページ10)

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9.カバディ部親睦買い物作戦ページ10

翌日。

「…意外と売ってんだな…？」

「ウチの部もマットとか買ってるんだ。部費で買うからちゃんと靴選んでね」

井浦は封筒を揺らしながら言う。

「大会の映像流してるー！」

「おお！！」

宵越くんは靴を手に取る。

「この形…ってアレだな…」

「格闘技とかで見るでしょ。カバディは形態が格闘枝…一番近いのが『レスリング」だ。だから底が薄くて、足首まで編み上げのが主流かな」

宵越くんはテレビを指差す。

「気になってたんだが…大会できる程人がいるんだな…ネタスポーツという認識だったが…」

「いやー大会もやっと最近できるようになったんだって」

「メジャースポーツとは比べ物にならん程
小規模だがな」

「センパイたちみたくずっとやってた人は
大喜びだよ」

「…なるほど……甘くねー世界だな…」

そう言った宵越くんに水澄くんはえ？と声を漏らした。

宵越くんは椅子に座り、続きを話す。

「マイナーだからこそ、少ないチャンスに懸ける必死な連中が多いんだろ。
畑違いだが、俺は全国でいろんな奴と戦った。
強豪、弱小問わず厄介だったのは…」

宵越くんは靴を履きながら言う。

「必死な人間だった」

その言葉に私の指先はぴくっと反応した。

ああ…カバディ、したいなって、まだ思う。

確かに、宵越くんはいやいやっていう割にカバディで手を抜いたことは1度だってなかった。

「耳がいてーなー。俺最初ナメてたもんね…」

「能京は毎度一回戦負けだしな…」

「しかしもったいね。全国レベルなのに辞めちまうとか」

「なんでサッカー辞めたんだ？」

伊達くんの言葉に宵越くんは動きを一瞬止めた。

「…………なんで？」

宵越くんは繰り返しそう呟き、喋らなくなった。

「宵越？」

水澄くんが呼ぶと、宵越くんは我に返った様に靴を持って立ち上がる。

「…言ったろ。元々スポーツが嫌いなんだよ」

「………」

レジに向かおうとした宵越くんに畦道くんが話しかける。

「お？ヨイゴシ靴それにすんのけ？」

「あ？何ニヤついてんだお前…」

「いやぁそれ、おらが買ったのと同じヤツだから！！」

その言葉に宵越くんは静かに靴を戻す。

「なんで戻す！？」

そうして皆は別々に、物を見ていく。

「へあばんど…」

畦道くんを見ると両手の人差し指にヘアバンドを掛けていた。

「畦道くん、要らなくない？」

ヘアバンドか…選手としてカバディやってた時に持ってたな。

今どこいったんだろ。捨てたっけ？