かけがえのある世界。【灼熱カバディ】 (ページ34)

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そして現在―――…

「そろそろ試合始めます!!整列お願い致します！」

私はボトルキャリーを椅子の横に置いて、タオルを人数分椅子にかける。

「ぶ……部長は整列しねぇの……？」

「こういうのは普通出るやつだけがやんだろ」

他とは違った落ち着いた様子の宵越くんに高谷煉が不思議そうな顔をした。

「…彼、素人すよね？1番落ち着いたカンジなんすけど…」

「ん…サッカーで全国4位の猛者らしいしな」

「へっ！？なんでカバディやってんの！？」

それ、あんたのセリフ？

「そりゃこっちのセリフだ」

宵越くんも高谷煉にそう言う。

「え？オレ？水泳は1番なったしもういいかなって……たまたま誘われたコレ、めんどい道具もないし面白そうだったから。……でもキミ……1番とってないのに、なんで辞めてんの？」

なっ……

しかし、宵越くんはその問いに答えなかった。

「それでは始めます！！前後半各20分！！ボーナスライン越えは守備が5名以上の時1点となります！！
それでな先攻、白、奏和で試合開始ィ！！！」

ﾋﾟｯ!!!

私は立ったまま試合を見つめる。

奏和の最初の攻撃は高谷煉からだった。

彼は独特の構えをしながらキャントを始める。

高谷煉の身長は、宵越くんとはほとんど変わらない…けど…

「なんだべあのポーズ……」

畦道くんがそう呟いた瞬間、指先が彼の胸元に当たる。

「いｯ……！？」

「カバディ…」

……！速い！

「カバディ…カバディ…」

横から止めようとする水澄くんを高谷煉は頭を抑えて止めた。

倒れた瞬間に隙をついて自陣へ向かったが、自陣には戻らずキャントを続ける。

だめ！まだキャント続いている！

「キャント続けてるぞ水澄！！攻撃を終わらせろ！！」

井浦の指示で水澄くんは高谷煉を押し返す。

「チッ！！」

「あらら、2点か……」

攻撃成功となり、2点獲得。

触られた畦道くん、水澄くんは外へ出た。

「敵が攻撃を続けようとしてたら既に触られた奴が敵陣に押し返せ。まだ触られてない仲間が狙われちまう」

「あー…なるほど」

「……今頃、基本の話してんぜ」

「なんだアイツ、デカいだけで初心者か」

ガヤの声に私は眉を寄せてしまう。

攻撃は能京となり宵越くんが攻撃に出る。

「俺にはとっておきがある。2点とりゃお前ら帰ってこれんだろ？短い休憩で悪いな」

「カァーッコイー！！」

「……アレはまだ早いよ宵越くん…」

椅子に座っている王城はそう呟く。