【イナオリ】元強化委員監視係は世界で戦う〈5〉 (ページ6)

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第205話ページ6

「おい、キャプ…」

灰崎はまた「キャプテン」と言いかけながらも、水神矢くんのユニフォームの裾を掴んだ。

「どうしたんだい？灰崎」

「あの皇帝ペンギン2号じゃ、」

「今の世界には通用しない。新しい皇帝ペンギン2号じゃなければ…だが、フランス戦は明日だ。時間がない」

「もう少しグラウンドを使わせてもらうぜ」

灰崎がコーチに向かってそう言うと、コーチは灰崎を見て言う。

「構わないけど、明日に疲れを残さないようにするんだぞ。凌兵」

コーチが言い終わると、灰崎は身を翻して歩き出す。

「灰崎？」

「俺たちに必要なのは時間じゃねえ、覚悟だろ！次の皇帝ペンギン2号を探すぞ！」

風丸と水神矢くんにそう言い、2人も灰崎と一緒に歩き出す。

その様子を見て、野坂が微笑んで言う。

「アドバイスするまでも無かったみたいだね」

「ちょっ、待てよ！俺もするぜ！」

「俺も！」

剛陣と明日人が続けてグラウンドに入っていく。

それに西蔭くんやタツヤや野坂も続く。

その背中を見て、少しここから離れていただけなのに、すごく懐かしい気持ちになる。

もう、自由にサッカーが出来るんだ。

ほんとにもう、みんなに何も後ろめたくない、オリオンの使徒になる前のサッカーが……

そう思って私もみんなの後を追った。

▼

「フランスにはオリオンの息がかかっていない？」

夜。

ミーティングルームに私たちは集まっている。

監督の話によると、フランスチームの監督は監督の昔ながらの友達らしく、オリオンの使徒は一人もいないらしい。

つまり、クリーンな試合ができるということだ。

試合がますます楽しみになった。

▼

「うーん……寝れない」

「お前、寝れねぇから俺の事部屋に呼んだのか？」

「廊下に出たらヒロトがたまたま居たから、ヒロトも寝れないのかなと思って」

今、私の部屋にヒロトがいる。

寝れなくて廊下に出たらヒロトがいたから呼んだのだ。

「明日試合なんだから、早く寝ろよ」

ヒロトはそう言いながら私の寝っ転がっているベッドの端に腰を下ろし、頭だけ私の方に向ける。

このアングルから見てもかっこいい……

「ヒロト、私が寝るまでそばに居てくれるの？」

「お前、明日スタメンだろ。倒れられたら困るんだよ」

そう言うヒロトの瞳は私を気遣うような光がある。

部屋が暗いからか、深夜テンションなのかはわからないけど、私は思わず寝転んだままヒロトの腰に腕を回す。