【イナオリ】元強化委員監視係は世界で戦う〈5〉 (ページ38)

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第237話ページ38

ピーッ。

「野坂！」

「必殺タクティクス、グリッド…」

すると、野坂が発動しようとしたところへ、ペトロニオが割って入る。

そして野坂からボールを奪い、口を開いた。

「必殺タクティクス、グリッドオメガ！phase1！」

え……！？

日本代表は竜巻に持ち上げられる。

「phase2！phase3！」

竜巻の力は徐々に大きくなり、高く舞い上がったのち、私たちは地面に叩きつけられる。

「いっ……！？」

いきなり過ぎて、何が起きたかすぐに理解ができない。

「なんで、やつらが…」

灰崎は横たわりながら呟いた。

どうやらイタリアチームは、日本のグリッドオメガまで研究済みだったようだ。

「さて…準備はいいですか？豪炎寺くん」

痛みに顔を歪めていると、監督のそんな声が聞こえ、私たちはベンチを見る。

すると豪炎寺が立ち上がり、ジャージを脱いだ。

「待たせたな」

「ごう……えんじ」

本来まともに食らえば起き上がれないはずのグリッドオメガだけど、私とのりかと灰崎と砂木沼くん以外のみんなは徐々に立ち上がっていく。

今回も、灰崎がすんでのところで真空波を出してくれたから数人以外は助かったのだ。

「日本の11番に邪魔されたか」

だけど、当の灰崎は体を起こすことが辛そうだ。

ギリギリの所でなんとか真空魔を出してくれたんだ。

「はい……ざき…ナイス」

私は全身に来る痛みを堪えて立ち上がろうとしてみるけど、指や足がぴくぴくと動くだけで、身体自体は動こうとしてくれない。

「咄嗟のことでタイミングがずれちまった」

私のすぐ傍にいた灰崎が上半身だけを起こしそう言う。

のりかと砂木沼くんは立ち上がることができず、担架で運ばれていく。

「いい判断だったよ、灰崎くん。君はもう充分やった。あとは僕たちに任せて…」

「バカ言ってんじゃねえ！あいつらに受けた借りを返さねえでフィールドから出られるかよ」

私のところにも2人の大人の人が担架を持ってやってくる。

だけど……

私は、私のことを担架に乗せようとする人の手を振り払う。

「大丈夫……です…」

なんとか顔だけ動かして、みんなの方を見てそう言うと、野坂が私のそばに片膝を着く。

「ですが、そんな起き上がれもしない状況で…」

「だって…あの人たちを、助けてあげないと……」

私は途切れ途切れだけどなんとか声を繋ぐ。

「あの人たちのサッカーをしている時の顔は、苦しそうだよ……それに、まだ1点も……きめてない…」