【イナオリ】元強化委員監視係は世界で戦う〈5〉 (ページ36)

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第235話ページ36

「離しなさい！この間躾てあげたのに、まだわからないの？」

イリーナさんがそう言って腕を振り上げる。

ﾋﾞｸｯ

思わず肩をビクつかせると、イリーナさんは勝ち誇ったような笑みを浮かべて、私に顔をちかづける。

「そんなに怯えて…可哀想に。オリオンの使徒であり続けていたら、そんな思いをすることもなかったでしょうに」

「怯えてなんて……」

そう言うとイリーナさんはその手を私の頬に添える。

その位置は、つい先日叩かれたところだった。

「こんなに冷や汗かいて…どうしたの？怖くないんでしょう？」

ｿﾞｯ

私が思わず目を瞑ったその瞬間、誰かによって私とイリーナさんは引き剥がされる。

そして、同時に日本ベンチまで引っ張られる。

それは、ヒロトだった。

「ヒロト！」

「何ビビってるくせに啖呵切ってんだよ。お前」

ヒロトの言葉に私は思わず笑みを零してしまう。

「守ってくれるって、ホントなんだね」

「………うるせぇよ」

イリーナさんがいたところを振り返ると、そのに彼女はもういなかった。

その代わり、ウラジミールがイタリア代表に指示する声が聞こえてくる。

「いいか、俺が来た以上、もう勝手な真似は許さんぞ」

ムカつきながら見ていると、イタリア選手たちがサポーターをつけはじめた。

「え…！？」

「どうして…！」

「何でまたつけてるんだよ！？」

明日人がペトロニオたちの元へ駆け寄る。

「仕方がないんだ。やっぱり、命令には逆らえない」

「このままじゃ自分たちの体が壊れるんだぞ！」

仕方がない、の一言で納得するわけもなく、明日人が肩を掴む。

「今、サッカー楽しかったろ？伝わってきたよ！俺たちもお前たちもみんな、自分のサッカーを思いっきりやっただろ？なのに、何でだよ！もっとやろうよ、自分たちの…」

「私だって、そう出来たらいいと思うさ…」

明日人の手を振り払うペトロニオ。

その顔は苦しそうだ。

「だったらどうして？」

「俺たちはガーディアンズオブクイーン、騎士として当然のことだ！」

カルロスはそう言うが、イタリア代表が見せたのは、無念といった表情。

こんなの、酷すぎる……

まさかここまでするなんて思わなくて、私は拳を震わせる。