58. ダメな私 ページ8
そんなものを向けられるほど、彼と知り合って長い訳ではないから。
きっと違うのだと、思う。
「 Aちゃん? どうかした? 怖い顔してるけど。」
「 え… ?」
「 やっぱりミンギュ、なにかしたのね。任せておいて。
私が懲らしめておくから!」
あとでゲンコツね、と鼻息を荒くして右の拳を強く握るマコさんを横目に、はっとする。
私、怖い顔してたのか…
色々なことを頭でぐるぐる巡らせていたら、いつの間にか顔にも出ていたようで。
そういうところ、直さないと。
毎回表情に出していたら、きっとまた子ども扱いされてしまうから。
「 仕事中なのに、すみません… すぐ戻りますね。」
「 ああ、いいのよ。もう昼ご飯の時間だから! お腹空いたでしょ?
一息つきましょうか。」
「 もうそんな時間… !」
気付けば時計の針は、もう12時をとっくに過ぎていて。
違う意味で頭を使ったから、お腹はしっかり空いている。
なんだか無性におにぎりが食べたくなって、
「 おにぎり、食べたいです。」
遠慮がちにお願いしてみたら、マコさんが太陽みたいな笑顔で応えてくれる。
「 うん! Aちゃんのお願いが聞けて嬉しいわ。
とびきり美味しいの期待しておいて!」
と子どものように楽しそうに張り切って、母屋の方へと駆けて行った。
「 あ、行っちゃった… お礼 言おうとしたんだけど、」
ありがとうございます、そう言おうとしたら風のようにいなくなってしまった。
マコさんらしいなと、思わず笑みが溢れる。
辺りを見回して、ついには私ひとりになった。
はあ、なんだかどっと疲れてしまった。
この世界に来てから、彼と出会ってから、感情の起伏がとても激しい。
それは決して悪い影響ではなく、良い影響だ。
前よりも人間らしく、なれている。
でも…
彼を想うほど、近付くほど、
比例して私の心は騒ついて、曇っていく。
こんな想い、今まで一度も経験したことがないから、
どうすればいいかなんて… 分からない。
彼のあの悲しさと愛しさの混じった瞳に翻弄される。
あの瞳に囚われると、全身が震えて涙が溢れ出そうになる。
「 … もう、ほんと意気地なしだ。… はあ、もう嫌だ。」
その場にしゃがみ込んで膝を抱え込み、顔を疼くめて弱音を吐く。
この世界に来てから、弱音を吐いてばかりだと反省した。
続く (更新停止中) お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←57. その瞳の奥には一体
204人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
パリコ(プロフ) - いちごさん» ありがとうございます♡ これからのお話もぜひ、お楽しみにしていてくださいね。 (2月20日 18時) (レス) id: db564d4a6c (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - ドキドキしながら拝見させて頂いております‥♡更新楽しみにしております^ ^ (2月20日 13時) (レス) @page3 id: 1f09b94a2d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:パリコ | 作成日時:2024年2月15日 12時