55. あなたに名前を呼ばれると ページ5
そう言われて、たちまち身体中の熱がもっと顔に集中していく。
驚いた顔で目をぱちぱちしながら見つめられていたけど、
その目が宙を2回3回泳いで、考える仕草を始める。
かと思ったら、こちらに再びピントを合わせた。
なにやらニヤニヤしている。
「 … お前、照れてるな。」
「 っ… ！違います…っ 照れてるとかじゃ、ないです。」
完璧なる図星をつかれて、どもってしまった。
… また、私の嫌な癖が出てしまった。
「 いや、照れてるな。前にもこんなことがあった。
すぐ顔が赤くなるのか。」
そう言って、小さく口を開けて笑っている。
また彼に一本取られて、悔しい。
反撃しようと思っても、全てその通りだからぐうの音も出ない。
意を決して、掴まれている右手を渾身の力でぐいっと引き寄せる。
いつまでもなめられてたまるか！
そうこっちも負けていられないと、赤い顔をもう隠さずに彼に近付く。
「 私のこと甘く見てたら、痛い目見ますからね… ！」
力強い声と視線で啖呵を切る。
もう触れてしまいそうな距離だけど、そんなのお構いなしだ。
私だってこれくらいできるんだってこと、思い知らせてやる。
急に威勢のいい私にびっくりしたのか、目を丸くする彼を見て、
「 してやったり！ 」と意地悪く笑って見せた。
「 … どんな風に、痛い目を見る？」
「 えっ… 」
それでもやっぱり、彼の方が一枚上手だったらしい。
掴まれていた右手はいつの間にか外れていた。
腰に温もりを感じて思わず目をやると、
彼の滑らかな手が添えられていて。
その瞬間に、さらに彼との距離が縮まった。
「 ほら、教えてくれ。」
「 ちょっと、冗談ですってば… っ近いです… ！」
「 冗談？ そうは見えなかったけどな。」
もう心臓が口から出てしまいそうなほど、バクバクが止まらないから。
彼の胸に両手を押し当て、なんとか距離を取ろうと試みる。
でも、
「 A 」
「 っ…… ずるい。」
彼が私の名前を呼ぶから、
頑張って力を入れていた両手をへなへなと力を失っていく。
「 … ずるい？ 私が？」
小さい声でぼそっと独り言のように呟いたのに、
地獄耳なのか距離の近さなのか聞こえていたようでそう返ってきた。
「 … あなたに名前、呼ばれると、息が止まりそうになるから。」
6. ストレートに、ダイレクトに→←54. りんごなんて嬉しくない
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 204人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
パリコ(プロフ) - いちごさん» ありがとうございます♡ これからのお話もぜひ、お楽しみにしていてくださいね。 (2月20日 18時) (
レス) id: db564d4a6c (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - ドキドキしながら拝見させて頂いております‥♡更新楽しみにしております^ ^ (2月20日 13時) (レス) @page3 id: 1f09b94a2d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：パリコ | 作成日時：2024年2月15日 12時
