04 ページ4
「ほら、こっち来い。」
三ツ谷に促されるまま距離を縮めるA。
余分に余らせすぎた裾をくるくると器用に折ってAの細い手首が見えてくる。
「しばらくこうしとけ。」
「ありがとー!さすが圧倒的お兄ちゃん的存在タカちゃん!!」
三ツ谷のおかげで自由がきくようになった両手を見せつけてにこにこ嬉しそうに笑うA。
「…はぁ。だから俺はオマエの兄貴じゃねぇ。」
本日何度目か分からない、呆れたような笑みを浮かべる三ツ谷。
でもコイツの笑った顔には弱いんだよな、と心の中で付け加える。
何度も兄のポジションを否定しても
この信頼しきった顔をみるとついつい否定するのも諦めてしまいそうになる。
だが、そういうわけにもいかない。
そうこうしている間に校門へたどり着く2人。
「それじゃあ私今朝は当番があるから。
タカちゃん!明日の約束忘れないでね〜!」
ぶんぶんと両手を大きく振り去っていく幼なじみ。
「おう。分かってるよ。じゃあな」
―――――――――-
1人教室に向かう銀髪頭。
「はぁー。せっかくマイキーが言うようにわざと会う機会減らしてみたのに。アイツ全然かわんねぇ。」
誰に向けたものでもない愚痴をこぼす三ツ谷。
でも会えなくて寂しいとは思ってもらえる存在ではあるらしい。
それだけで今まで会うのを我慢していた自分が少し報われそうになる。
幼なじみかつ兄のような存在。
絶対的に信頼をおかれていて不動の関係性。
悪い気はしないがその先に続く未来に辿りつきたくて、先日柄にもなくマイキーにポツリとAのことを口にしたら
「ふーん。押してもダメなら引いてみたら?」
と何でもないように一言だけ言ってのけたマイキー。
自分なりにその言葉を噛み砕いてみた結果、会う機会をわざと減らして
自分の存在を知らしめたい…という我ながら浅はかな作戦だったのだが、とくに効果はなかったようだ。
あとマイキーは最後にこうも言っていた気がする。
「…押してる様にも見えねぇけどな。」
簡単なようで難しいことを言う。
「さて、どうすっかな。」
本日2度目の独り言を呟き、自身の教室へと姿を消していった。
29人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さくら | 作成日時:2021年9月28日 18時