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私はごく普通の女子中学生。
三木谷A、15歳。
夏も終わりかけ、夏服の制服だと早朝は少し肌寒い。
昼ごろになるとまた気温は上がってくるのでこの肌寒さもそれまでの辛抱。
むしろ朝が苦手な私にとって
ほんの少し涼しいこの空気はちょうど良い眠気覚ましになっていいかもしれない。
そんなことを考えながら、通い慣れた通学路をとぼとぼ歩いているとよく見知った後ろ姿を見かける。
最近その姿を見かけることが減っていたから
久しぶりに見かけたその姿が嬉しくて小走りに距離を縮めていく。
「ターカちゃん!おはよっ」
銀髪頭で左耳に十字のピアスを付けた、少し撫で肩の私のよく知る男の子。
声をかけると同時に、彼の腕に勢いよく絡みつく。
「わっ。Aか、びっくりした」
少し驚いた風にこちらに視線をやる三ツ谷。
「一緒に行こうよ、タカちゃん」
腕から大きな瞳で覗き込んでくるA。
「あぁ、いいぜ」
中学に入ったせいかしばらく会う機会が減っていて
こうして話せたのもわりと久しぶりな気がするのに
いつもと変わらず優しく返事をくれる三ツ谷。
「…?どしたのA」
挨拶ついでに掴んだ三ツ谷の腕をペタペタ不思議そうに触るA。
「うーん、なんか思ってた感触と違うから…ほんとにタカちゃんかなぁと思って…硬くて太くて…なんかタカちゃんがタカちゃんじゃない感じ」
「そうか?まぁ成長期だからな。俺だってもっとデカくなって男らしくなっていくんだよ。」
「そっか…言われてみればタカちゃんも成長するのは当たり前だよねぇ」
彼のいうことはもっともな正論なので
うんうんと今更の事実に納得するA。
「何当たり前のこと言ってんのオマエ。変なやつ」
そう言って笑う三ツ谷。
だけどいくら体が変わったってこの優しい笑顔は昔から何一つ変わらない。
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作者名:さくら | 作成日時:2021年9月28日 18時