『夕飯...作ってくれてたんですか?』 ページ5
少し街よりにある、大きな高級マンション。
その最上階にある部屋の一つが、私と宇髄先生が住んでいる部屋だ。
ここに住むようになってもう七、八年が経つが、見上げる度に高いな、と思うのは変わらない。
『ただいま』
部屋に入ってそう声をかけると、リビングの方から宇髄さんの気配が近付いて来た。
以前までは私の方が早く帰って来ていた時の方が多かったので、"ただいま"と言うのも何となくまだ慣れない。
昔の言い方は堅苦しいから駄目だと、引き取られてすぐの時に宇髄さんに言われたのだ。
「おう、お帰り」
そう言ってリビングから出て来て出迎えてくれた宇髄さん。
その姿を見て、私はぱちくりと数回目を瞬かせた。
『...あの』
「ん、どした?」
『夕飯...作ってくれてたんですか?』
肩より少し下辺りまである銀色の髪を後ろで一つにまとめた宇髄さんは、見慣れない黒のエプロンをしていた。
リビングの方からは、ハンバーグらしき美味しそうな匂いと肉の焼ける音がする。
私の問いかけに、宇髄さんは胸を張った。
漫画かアニメのシーンなら、ドヤッと効果音が付きそうだ。
「そ、宇髄様特性ハンバーグだ!もうすぐ出来っから、早く手ェ洗って着替えて来いよ」
そう言うと、宇髄さんはリビングに戻って行った。
私が言われた通り手を洗い着替えてリビングに行くと、美味しそうなハンバーグとサラダ、コンソメスープ、そしてホカホカのご飯が並べれていた。
『...私よりも上手なのでは?』
「それはないから安心しろ」
冗談抜きで言った私の言葉に、宇髄さんは笑いながら右手を顔の前でヒラヒラと振る。
「お前、テスト期間で帰りいつもより遅くなるだろ?俺は部活もテストもねぇから早く帰れるし、どうせなら俺がメシ作ろうかなって。勿論、出来る範囲の掃除もやってあるぜ。風呂も入れてあるし」
『...すみません、何から何まで』
宇髄さんも疲れているのに、家事までやらせてしまって申し訳ない。
思わず謝罪した私の頭を、宇髄さんは軽く小突いた。
「なーに謝ってんだ。別に家事全部Aの仕事ってわけじゃねぇし、俺がAに負担かけないよう好きでやってる事なんだから、気にすんな。あと、こういう時は"すみません"じゃなくて"ありがとう"だろ?」
『あ...ありがとう、ございます』
机に頬杖を付き、催促するように私を見つめていた宇髄さんは、満足そうに笑った。
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名無し58428号(プロフ) - うおおおおついにか!これから楽しみです! (2021年12月14日 23時) (レス) @page45 id: d193f19839 (このIDを非表示/違反報告)
向日葵(プロフ) - ついに婚約…これからどうなっていくのかとても楽しみです!! (2021年12月14日 23時) (レス) @page45 id: f6ff1cdc98 (このIDを非表示/違反報告)
イリア(プロフ) - 名無し58428号さん» 返信遅れて申し訳ありません!そう言っていただけて、こちらとしても作品を作る励みになります!ありがとうございます! (2021年12月14日 19時) (レス) id: f3367b760e (このIDを非表示/違反報告)
名無し58428号(プロフ) - 最高っですっ! (2021年12月8日 1時) (レス) @page39 id: d193f19839 (このIDを非表示/違反報告)
イリア(プロフ) - お酒さん» 応援ありがとうございます!何とか乗り越えて来ました(笑) (2021年7月26日 19時) (レス) id: f3367b760e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イリア x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.pnp/sakuramoti
作成日時:2021年5月2日 23時