【鬼滅の刃】今世では教師に溺愛されてるんだが【宇髄天元】

『したくない、と言ったら多少嘘になりますけど...』 ページ43

夕飯を食べ終え三人と別れた後、私は合宿所から出た。

正面にあるベンチに向かうと、そこには既に人影が一つ。



『宇髄先生』



私が声をかけると、宇髄先生はこちらに顔を向けた。

血糊は全て落とされていて、顔にはいつもの花のようなペイントだけが残っている。

宇髄先生の銀色の髪が月光を青白く反射し、風になびいた。



『ご用件は何ですか？』



そう言いながら、私は少し距離を開けて宇髄先生の隣に腰を下ろした。



「合宿のジンクス、知ってるだろ？」


『はい、ブレスレットの件ですよね』


「そ。だから交換しようと思ってさ」



宇髄先生がパーカーの腕を捲り、白く光るブレスレットを取った。

それを私の方へ差し出して来る。



「信じてるわけじゃねぇけど、せっかくだし乗らなきゃ損だろ」


『構いませんけど...先生達にバレないようにしてくださいね』



私は宇髄先生の手からブレスレットを受け取り、それをジャージのポケットに入れると、

自分の腕に着けていた紫色のブレスレットを取った。

それを渡すと、宇髄先生は嬉しそうに笑う。



「アイツらを地味に宥めた甲斐があったわ」


『肝試しの時まで狙われてましたもんね』



宇髄先生なら脅す事も出来たのだろうが、

相手は生徒、それも女子となると下手な真似は出来なかったのだろう。


すると、宇髄先生は両腕を伸ばし、私の腰に回した。

そのまま身体を傾けて、私の肩にぐりぐりと額を押し付ける。



『離れてください。誰かに見られたらどうするんです？』


「A不足なんだよ。夜になっても派手にAとイチャつけねぇし。

　Aは俺とイチャイチャしたくない？」



少し顔を上げた宇髄先生が、上目遣いで私を見る。

赤く光る瞳に見つめられ、私は顔を逸らした。



『したくない、と言ったら多少嘘になりますけど...』


「多少かよ、地味に傷付いたわ」



すると、出入口の方から数人の生徒の気配が近付いてきた。

宇髄先生も声が聞こえたらしく、名残惜しそうに私から離れる。



「チッ、もうタイムオーバーかよ」


『みたいですね』


「もうちょっと一緒にいたかったが、仕方ねぇな。

　ちゃんと風呂で身体温めて寝ろよ。おやすみ」


『はい、おやすみなさい』



宇髄先生と別れ、怪しまれないよう一人で先に中に戻る。

...この寂しさは、きっと気のせいだ。

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