【鬼滅の刃】今世では教師に溺愛されてるんだが【宇髄天元】

『駄目ですか？』 ページ47

フグを捌くには免許がいる。

だから自分で捌けないのは少し複雑だと思いながらも買ったフグ刺しを盛り付けていると、

玄関からドアの開閉の音と共に「ただいま...」という疲れ切った声が聞こえてきた。



『お帰りなさいませ』


「おう...」



どうやら靴を脱ぐ気力も残っていないらしく、

宇髄先生は荷物をドサッと落として段差に座り込んでしまった。



「行事でこんなに疲れたの初めてだわ...腹減った...」


『お疲れ様です。今日の晩御飯はフグ刺しですよ』


「すぐ行く」



"フグ刺し"と聞いた瞬間、宇髄先生は勢いよく立ち上がった。

余程嬉しかったのか、紅色の瞳はキラキラと輝いている。

その姿は、まさに子供。



「そういえばよぉ」



もぐもぐと上機嫌でフグ刺しを食べていた宇髄先生が、

ふと何かを思い出したように口の中のものを嚥下して口を開いた。

それに釣られて、私も箸を止める。



「"行ってらっしゃいませ"とか"お帰りなさいませ"ってやめねぇ？」


『駄目ですか？』


「駄目じゃねぇけど、もうそんな時代じゃないし、

　何よりよそよそしいじゃん。何か恋人というより家政婦みたいでさ」



そうだろうか。

だが考えてみれば、この時代でそのような言葉は普通使わない。


しかし、私は今の言い方の方が慣れてしまっているのだ。

少なくとも宇髄先生には。



『急に言われましても、そんなすぐには直せませんが』


「ちょっとずつ慣れてくれればそれでいいよ」



私は頭の中で少し想像してみた。

宇髄先生に"行ってらっしゃい"、"お帰りなさい"か...違和感しかない。


それでも、私が拒否しなかったことでさらに機嫌を良くした宇髄先生を見ると、

慣れなくても少し頑張ってみようかと思った。

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