【鬼滅の刃】何故か既婚者にとてつもなく求婚されるんだが【宇髄天元】

『本当。だから安心して』 ページ14

「わぁ、綺麗な髪紐ですね！」


「よくお似合いです、天元様」


「ありがとな」



少ししてお茶を持って来てくれた須磨さんとまきをさんが、

音柱様が髪を結わっている事に気付き目を輝かせた。

わいわいと騒ぐ二人を横目に見ながら、私は立ち上がる。



「どこが行くの？」


『はい、炭治郎くん達のお見舞いに。

　少し遠くの方で任務があるので、屋敷に帰らずそのまま向かいます』


「気をつけて行って来い」



そう言って見送ってくれた音柱様達に頭を下げ、私は蝶屋敷へ向かった。





『カナヲ』


「...A、久しぶり」



炭治郎くんの病室に向かう途中、桃色の髪飾りが目に入った。

私が声をかけると、カナヲは振り返って嬉しそうに笑った。

その手には花瓶があり、色とりどりの花が生けてある。



「炭治郎達のお見舞い？」


『えぇ。嘴平くんはまだ目を覚ましていなかったけど、炭治郎くんも？』



私が尋ねると、カナヲは悲しげに目を伏せて頷いた。

炭治郎くんの病室の戸を開けると、彼の腕は未だに点滴が繋がれたまま。



「...目、覚ますよね」



近くの机に花瓶を置いたカナヲが、小さく呟く。

白い手が微かに震えていて、私は安心させるようにその手を握った。



『大丈夫。時間はかかるかもしれないけど、絶対に目を覚ますから』


「本当...？」


『本当。だから安心して』



死期が近い人の気配は、今にも消えてしまいそうな程弱々しい。

けれど炭治郎くんの気配は、ちゃんと生きている。

目を覚ましていない嘴平くんも同様で、もうしばらくしたら目を覚ますだろう。



「...ありがとう、A」



私の言葉で吹っ切れたのか、カナヲは花が綻ぶ様に笑みを浮かべた。

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