漆捨陸 ページ44
美しく光る月には似合わない、刀と爪がぶつかり合う音がする。
鬼に血鬼術を使わせる暇を与えぬよう、Aはひたすら刀を打ち込んでいた。
「随分単純な攻撃ばかりじゃない!そんなんじゃ、アンタの体力の方が持たないわよ?」
『大丈夫よ。絶対にあなたをあの世へ送るから』
「やれるもんならやってみなさいよ!」
そう叫んだ鬼は、Aの攻撃の隙を付いて爪から斬撃を飛ばす。
至近距離にいたAは、咄嗟に刀で防ごうとするも間に合わなかった。
斬撃はAを縛り付けるように身体に巻き付く。
『っ...!』
「血鬼術__【幻想夢】」
鬼はAの額に手を翳し、血鬼術を使う。
力で身体に巻き付いた斬撃を壊すと、Aは鬼から距離を取った。
『(何も変わってない...効いてないの?)』
柱のみんなや家族、鱗滝達の事も覚えている。
すぐに離れた為、効かなかったのだろうか。
『...まぁいいわ。それより、そろそろ終わりにしていいかしら?』
「いいわよ。苦しまないように殺して喰って...」
『光の呼吸、伍ノ型__光の理想郷』
辺り一面に、光の花びらが舞う。
そのあまりにも美しい光景に、鬼は思わず我を忘れて見惚れていた。
___自分の頚が斬られた事にすら気付かない程に。
花びらが消え、元の夜の暗さが戻る。
その時初めて、鬼は自分の頚が斬られている事に気が付いた。
「なっ...!?」
『人を喰うだけでなく、その人の存在をなかった事にするなんて。
あなたがしてきた事は、決して許される事じゃない。
けど、あなたが本当はそれを望んでいなかったのは知ってる。
来世では、幸せな人生を歩めるといいわね』
Aの言葉で、鬼は人間の頃の記憶の断片を思い出した。
家族みんなで幸せな生活を送っていたのに、気付けば自分は鬼になっていて、
家族も殺してしまっていた。
その記憶を"消したい"がために、たくさんの人間を喰らってきた事も。
「...ごめん、なさい...ありがとう」
鬼は涙を流しながら、月が浮かぶ夜空へ昇って行った。
『(結局、鬼の血鬼術は効かなかったわね)』
そう思いながら、Aは踵を返した。
しかし、Aは知らなかった。
記憶を消された者は、その消された記憶が何なのかすら気付けないことに。
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桜餅(プロフ) - 天さん» 狐の面を付けなくなってから、正確には無一郎くんに過去を話した時から本来の声で喋ってます。分かりにくくてすみませんでした... (2020年4月2日 15時) (レス) id: 03f4026521 (このIDを非表示/違反報告)
天 - 声を偽っていた設定ってどうなったんですか? (2020年4月2日 1時) (レス) id: c7394f7d2c (このIDを非表示/違反報告)
桜餅(プロフ) - 詩さん» ありがとうございます!現在受験の追い込み時期でして、更新が少し遅れそうなんですが、できる限り更新出来るよう頑張ります! (2020年1月19日 19時) (レス) id: 03f4026521 (このIDを非表示/違反報告)
詩 - 続き楽しみにしてます!頑張って下さい! (2020年1月19日 13時) (レス) id: 059c2de8f9 (このIDを非表示/違反報告)
桜餅(プロフ) - 結衣さん» 絶対楽しいですよね柱の飲み会!楽しんでいただけて嬉しいです! (2019年12月29日 1時) (レス) id: 03f4026521 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イリア x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.pnp/sakuramoti
作成日時:2019年12月28日 23時