【鬼滅の刃】闇柱は闇を背負う【時透無一郎】

参拾弐 ページ36

暗い。

Aの視界に、終わりのない闇が広がる。


ここはどこなのだろうとAが辺りを見回すと、見覚えのある後ろ姿が二つ。

Aは二人の方に駆け寄りながら叫んだ。



『父上！母上！』



しかし、二人は聞こえていないかのようにそのまま歩みを進める。

Aも、走っているはずなのに歩いている二人に追いつけない。

むしろ、その距離はどんどん離れていくばかりだ。



『父上！！母上！！』



Aはもう一度叫び、届くことのない手を伸ばす。

すると、二人は悲しそうな笑顔で振り向いた。



「A、私たちはいつも、あなたの傍にいるわ」


「胤羽を...姉さんを、助けてやってくれ」


『待って！いかないで！一人にしないでっ！』



Aの目に溜まっていた涙が頬を伝う。

二人の姿は、だんだん小さくなっていった。



「あなたは一人じゃない。あなたのことを大切に思う人たちがたくさんいるのよ」


「Aは強くなった。光の呼吸を完成させる日も近い。

　いつかきっと、この悲しみの連鎖を断ち切ってくれ」


『父上、母上！父上！！母上ー！！』





『っ...』


「あ、起きた？」


『なっ、時透...！？』



目を覚ますと二人は消えており、代わりに横から聞こえるはずのない声が聞こえた。

目線をそちらに移せば時透がいて、Aは勢いよく起き上がった。


そこで面を付けていないことに気づき、急いで見回すも見当たらない。

すると、「探し物はこれ？」と時透がAの面を見せた。



「...やっぱり、女だったんだ」


『...何の用』



時透の言葉に反応せず、Aはそう聞いた。



「お館様から文を頂いたんだよ。

　【もしかしたら、今ならAが過去を話してくれるかもしれない】って」



それは、Aへの命令でも何でもない。

しかし先日のこともあり、Aは考えた。


素顔を見られたとなれば、もう話さないわけにはいかない。



『...分かった、話す。けど、他の柱には話さないで。

　私の過去は、私から話したいから』


「うん、いいよ。約束する」

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大正コソコソ噂話

Aの父の名前は光秀(こうしゅう)、

母の名前は夜月(よづき)と言います。

ちなみに夜月の旧姓は鱗滝。

錆兎たち同様、孤児として鱗滝さんに引き取られ、苗字をもらいました。

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