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参拾壱 ページ35

藤の家門の家から帰ったAは、着替えることもせず畳の上に寝転ぶ。

面を外したAの顔を、繭が覗き込んだ。



『...鬼舞辻無惨に会ったの』



繭の頭を撫でながら、小さくそう言った。



『どうしてかしらね。あれだけ敵だと思っていたのに、いざ目の前にしてみると、

 頸を斬る前に刀が止まってしまった』



初めてあんな殺気を感じた。

頭の中では斬らなければならないと分かっていたのに、腕が動かなかったのだ。


すると、朝早くに出発したせいか、眠気が襲ってきた。

今日は夜の巡回だけなので、Aは迷うことなく目を閉じた。





Aが眠りに落ちて少しした後、時透が闇屋敷にやってきた。

昨日、時透の元に産屋敷から文が届いたのだ。


【もしかしたら、今ならAが過去を話してくれるかもしれない】



そう書かれていた。

それで時透はやってきたのだが、玄関で声をかけても誰も出てこない。

だが、人の気配はある。


庭に回って中を見ると、Aが背中を向けて寝転んでいるのが見えた。

近くでは繭も一緒に丸まって寝ている。


時透は草履を脱いで縁側に上り、部屋の中に入った。


後ろからAの顔を覗き込むと、思わず息を飲んだ。



「(面をしてない...綺麗...)」



伏せられた長い睫毛、形のいい桃色の唇。

いつも面で顔を隠しているからか、肌は陶器のように白い。


素顔を見るのは二度目だが、前回は夜だったこともあり、

はっきりとは見えていなかったのだ。


すると、Aの唇が微かに動いた。



『ち...ぇ...はは...』



小さな声が時透の耳に届き、時透はもう一度耳を済ませる。



『父上...母、上...』



今度ははっきりと、そう聞こえた。

家族の夢でも見ているのだろうか。


じっと寝顔を見ていると、不意にAの目から涙が伝った。



『いか....ない、で...』



いつものAからは想像も出来ないほど弱々しい声。

その声が何故か、時透の胸に深く突き刺さった。

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桜餅(プロフ) - 。さん» 起きてすぐだったのと、無一郎くんがいることを知らなかったので声は作ってません。説明不足で申し訳ないです... (2020年4月2日 15時) (レス) id: 03f4026521 (このIDを非表示/違反報告)
桜餅(プロフ) - ウルさん» そうなんですね、初めて知りました!私は瞳孔が青、私たちで言う茶色の部分が白のイメージでした(これでもわかりにくいかったらすいません...)コナンの「純黒の悪夢」という映画に出てくるキュラソーというキャラの目を見ると分かるかと思います。 (2020年4月2日 15時) (レス) id: 03f4026521 (このIDを非表示/違反報告)
- 時透君に素顔を見られた時(参拾弐話)って、声つくってたんですか? (2020年4月2日 1時) (レス) id: c7394f7d2c (このIDを非表示/違反報告)
ウル(プロフ) - 透明の瞳というのは何色を表しているんでしょうか?本来透明の瞳というのは瞳の裏の赤い色になります。なのでさくしゃはどのような色を想像されたんでしょうか?(少し疑問に思いました。 (2020年4月2日 0時) (レス) id: c7394f7d2c (このIDを非表示/違反報告)
桜餅(プロフ) - 結衣さん» ですよね!いろんな人が鬼とハーフとか考察してましたが、それとは比にならないくらい辛い過去でした..だからこそ、やっぱり蜜璃ちゃんと結ばれてほしい!来世とかじゃなくて今二人が鬼殺隊として生きてるこの時代で!みんな頑張れ!! (2019年12月24日 1時) (レス) id: 03f4026521 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:イリア x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.pnp/sakuramoti  
作成日時:2019年12月1日 14時

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