弐 ページ4
自分の屋敷に戻ったAは、棚にある救急箱を持って座布団の上に座った。
そして、包帯と消毒を取り出す。
腕や足に出来た傷に塗り、包帯を巻いていく。
この傷は、鬼に付けられたものではない。
Aが使う呼吸の一つ、闇の呼吸によるものだった。
闇の呼吸は、Aにしか使うことは出来ない。
しかし、本人もいつの間にか使えるようになっていたため、
この呼吸は何の呼吸の派生なのか分からなかった。
そんな異例の呼吸だからなのか、
闇の呼吸を使うと、その代償として必ず身体のどこかに傷を負う。
その傷は、使用する型によって酷さが異なる。
数の大きい型を使うほど、傷は深く、回復が遅い。
幸いAは元の身体能力が高いため、壱ノ型でも充分だった。
手当てが終わって救急箱を片付けると、
Aの足元で「みゃあ」と小さく猫の鳴き声が聞こえた。
金色の瞳を持つ、首に鈴のついた首輪をしている白猫。
Aの飼い猫、繭(まゆ)だった。
『どうしたの?』
Aが屈んで首を撫でると、嬉しそうに喉を鳴らす。
それを見たAの顔が綻ぶ。
『これからまた任務に行ってくるから、いい子にしてるのよ』
そう言って頭を撫でたAは、脱いでいた羽織りを着て東へ向かう。
町までかなりの距離があるが、まだ正午にすらなっていないので、
Aはゆったりとした足取りで歩いて行った。
・
『すまない。最近ここで女の行方不明事件が相次いでいると聞いたが、
何か知っている情報はあるか』
夕方前に着いたAは、近くで立ち話をしていた女性二人に尋ねた。
「あぁ...丁度昨日もありましたよ。確か十六程の方だったと聞きました」
「その前は十二の子がいなくなったんです。私の友人の妹さんで...」
『...そうか。情報提供感謝する。二人も、夜はあまり外に出歩かないように』
目の前にいる二人も、二十に満たないだろう。
そう判断したAはそう言って、別の人に聞き込みをしに行った。
内容は殆ど同じ。目撃情報もなかった。
日が落ちていないからか、近くから鬼の気配はしない。
しかし、若い女を喰っているのならば、力は相当だろう。
赤くなって来た太陽を見たAは、歩みを速めた。
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桜餅(プロフ) - 。さん» 起きてすぐだったのと、無一郎くんがいることを知らなかったので声は作ってません。説明不足で申し訳ないです... (2020年4月2日 15時) (レス) id: 03f4026521 (このIDを非表示/違反報告)
桜餅(プロフ) - ウルさん» そうなんですね、初めて知りました!私は瞳孔が青、私たちで言う茶色の部分が白のイメージでした(これでもわかりにくいかったらすいません...)コナンの「純黒の悪夢」という映画に出てくるキュラソーというキャラの目を見ると分かるかと思います。 (2020年4月2日 15時) (レス) id: 03f4026521 (このIDを非表示/違反報告)
。 - 時透君に素顔を見られた時(参拾弐話)って、声つくってたんですか? (2020年4月2日 1時) (レス) id: c7394f7d2c (このIDを非表示/違反報告)
ウル(プロフ) - 透明の瞳というのは何色を表しているんでしょうか?本来透明の瞳というのは瞳の裏の赤い色になります。なのでさくしゃはどのような色を想像されたんでしょうか?(少し疑問に思いました。 (2020年4月2日 0時) (レス) id: c7394f7d2c (このIDを非表示/違反報告)
桜餅(プロフ) - 結衣さん» ですよね!いろんな人が鬼とハーフとか考察してましたが、それとは比にならないくらい辛い過去でした..だからこそ、やっぱり蜜璃ちゃんと結ばれてほしい!来世とかじゃなくて今二人が鬼殺隊として生きてるこの時代で!みんな頑張れ!! (2019年12月24日 1時) (レス) id: 03f4026521 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イリア x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.pnp/sakuramoti
作成日時:2019年12月1日 14時