ガチ恋一直線ライバー【knmc】

蜃ｺ莨壹＞ ページ8

この半径約100mで完成された箱庭が私の世界の全て。それでもいいやって、思っていた。


高い塀に囲まれたここは、毎日色んな怪我人や病人がやってくる。それを治すのが私の仕事だった。どうやら私は聖女と呼ばれる職についているらしく、みんな私をそう呼んだ。名前で呼ぶのはカナエだけだった。








｢地球ってどれくらい広いの？｣


そう鳥に聞いても、彼は自由気ままに飛び回るばかりで話を聞いてくれない。誰に対しても平等に笑いなさいってシスターは言ったけど、歯は見せちゃダメらしい。じゃあ喋れないよってカナエに聞いたら、話すなって事だよって答えを教えてくれた。


｢また来てね｣


飛び去る背中に手を振る。動物とは会話は成立しないからこれはセーフでしょ。……そういえば、獣人とだったらどうなんだろう。シスターは穢らわしい人間の形した化け物って言うけど、それは違うんじゃないかなぁって最近思う。だって、それなら人間の形をしていない獣にも同じ事が言えるだろうに、シスターはそれには慈悲を与えるから。それが人の形になっただけでどうしてそう思えるのだろう。




｢＿＿＿初めまして、宜しければお見知り置きを｣


………？。幻聴かと思った。だって、この教会にはカナエ以外に自由に敷地内を出歩ける男の子なんて居ないし、そもそもこんな奥まで来れるワケがない。ここは、カナエでさえ知らないはずの場所なのに。でも声の主が私の隣に座って、私はやっと現実を受け入れた。


｢良い天気ですね｣
｢………｣


彼に付いたピコピコ動く耳と揺れる尻尾。……獣人だ。初めて見た。


｢………獣人は嫌いですか？｣
｢だめだよ｣


あ、声出しちゃった。獣人と喋ったってバレたら怒られるかな。……ちょっとだけなら、大丈夫かな。


｢バレたら殺されちゃうよ｣


シスター達はみんな獣人が嫌いなんだって。なんでだろ、可愛いのに。でも、私は聖女だから、嫌いなフリをしなきゃダメなんだって。でも、……したくないなぁ。


｢これあげるからあっち行って｣


着ていたマントを彼に被せた。フードを被ってれば耳が隠れるから、教会と繋がった森から出ればまず見つからないだろう。見つかっても誤魔化せる。


｢二度と来ちゃだめだよ｣
｢…………僕、トウヤっていいます。次来たときは、貴方の名前を教えてくださいね。約束ですよ｣


だからせめて冷たくしなきゃって冷たくしたのに、彼は何故か微笑んだ。そして数日後、彼は本当に私に逢いに来て＿＿＿＿

君だけど君じゃない→←【にじさんじ】検索サジェストのせいで情緒が安定しない雲桜【切り抜き】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す