空虚な人形２【青の祓魔師】 (ページ43)

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第八十六話ページ43

「睦月」

寮に帰ろうと歩いていると、知っている声に呼び止められた。

「霧隠先生」

「そのーなんだ、ちょっといいか？」

「？はい」

人通りの少ない廊下。
霧隠先生は窓に腰かけてぼんやりと外を眺める。

「そろそろ学園祭だな」

「そうですね」

「お前のクラスは出し物何やるんだ？」

「ああ、メガネ喫茶ってのをやるみたいですよ」

「やるみたいって、お前もクラスの一員だろーが。なんで他人事みたいな・・・」

「霧隠先生」

「・・・なんだ」

「先生が本当に聞きたいことは、そんなことではないのでは？」

「・・・」

やっぱり、

「睦月、あたしは教師だ。
　そしてお前は祓魔塾の生徒。
　教師のあたしには生徒であるお前を守る義務がある。

　・・・そのうえで聞く」

「何でしょう」

「睦月 A。
　小学校・中学校は姉と共に県内の私立へ通い、ごく普通の成績を修め、正十字学園に進学。
　両親は十年前に死亡。姉は県外の大学へ進学。叔父は元祓魔師で、今は田舎で農家をやっている。

　合ってるか？」

「ええ、違いありません」

「そうか・・・。

　だが、どうにもおかしいところがあってな。

　学歴はお前のも姉のも偽装された様子はなかった。
　もちろん、田舎に引っ越したって言う叔父の所在も確認した。

　だがな、おかしいんだよ。

　小・中学のお前やお前の姉と同級生であったはずの生徒から話を聞くと、

　睦月A・灯花という生徒は知らない(‥‥)と、口を揃えてそう言ったんだ」