瞳の奥の本当のキミ３【Ｓ×Ｎ】 (ページ26)

今日:5 hit、昨日:5 hit、合計:58,617 hit

Episode ８６／二宮side ページ26

作品を見ているうちにどんどん引き込まれていって、大野さんの作品に対する"好き"って気持ちをすごく感じて。

好きを仕事に出来る素晴らしさ、みたいな事まで考え始めたら自然に言葉が紡がれる。

でも、そんな単純なことじゃないって。

大野さんの昔の話は…自分の中でどう処理するのが正しいのかなんて今の俺には到底わからない。

ただその話を聞いてから見る作品はまた違った良さもあって。

大野さんが１回部屋を出て行って1番隅に置いてあったダンボール箱に手をかける。

そこに入っていたのは数多くの人物の絵。

｢あ…………｣

一番上に書かれていたのは櫻井先生。

桜並木の中で本かな…を読んでいる横顔。

それを持ち上げて次の作品に目をやれば………

嘘。

俺の足から力が抜けてガタンと崩れ落ちる。

｢ちょっと、(あだ名1)？｣

音を聞きつけて戻ってきた大野さんの声の方も向けず…

｢…なんで、この人が？｣

震える声で問いかける。

｢え、知り合いなの？｣

何故か焦ったような大野さんの声。

｢…義理の姉、だったん、です｣

お互い動揺を隠せない状況でもそっか、って俺のことを優しく抱きしめる大野さんの匂いは何故かすごく心地よかった。