【短編集】あなたのための物語【仮面ライダーエグゼイド】 (ページ10)

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のだけど。
少しして風邪をこじらせたわたしは家族に連れられて、骨折した時もかかった成都大学附属病院にかかることになった。

こじらせた、とは言っても、ふらふらしたりすることはなく、あくまでも熱が出ているだけ、という感じ。
それもあってか、家族がわたしの保険証やらなにやらを看護師さんに渡しているときに、考えていたことをつい口に出してしまった。

「明日那さんはいますか」

お母さんの制止する声も聞かず、仮野明日那さんっていう、看護師さんがいるはずなんですけど、と続けると、看護師さんが困ったような表情を浮かべる。

「え…っと、明日那さんは…」

後ろにいた看護師さんとアイコンタクトをとってから、看護師さんは苦笑いをして、やめちゃったのよ、と言った。
幼いながらに、うそだ、と思う。
だって明らかに様子が変。

やめちゃったなら最初からそう言えばいいのに、どうして嘘をつくんだろう。
…明日那さんに、何かあったのかな。

そして、特に怪我をすることも病気にかかることも無いまま、わたしは看護師になった。
明日那さんに憧れていたことで看護師を志すようになり、あわよくば明日那さんにもう一度会えないかだろうか、なんて淡い期待を抱きつつ、ついには成都大学附属病院に勤務できることに。

幼い頃と変わらない病院の姿に、懐かしさを覚えたのも束の間。
後ろから聞こえたちょっと永夢！なんて声に振り向くと、大きく転んだ白衣の人と、その人を支えながら起きあがらせる派手な服の女の子がいた。

髪も服も違うけど、ずっと憧れ追いかけてきたあの人をわたしが見間違えるはずがない。
あれは、あのひとは、きっと。

「明日那、さん」

そんな小さなつぶやきに応えるように、ふいに明日那さんがこっちを向いた。
目が合って、ああ、ハッピーエンドだ。