死を想う【西馬ニコ】 ページ30
西馬ニコは出てきません。
ほんのり「ストレートな愛を」の夢主サイドっぽい。
死、とは。
バグスターにとって、死は本来存在しないもの。
一番縁遠く、踏みつけるもの。
理解の及ばないもの。
想像することすらままならない曖昧なものを、私がふと想うのは、私が守るべき存在が人間だったからだろう。
私の要であり主であり光である西馬ニコという人間が死と近しい生き物であるということが、バグスターの私を死と結びつけた。
どんなに手を伸ばしても届かないはずのものが、私の隣に立つ彼女には簡単に掴めてしまうのだ。
それはあまりにも非情で、必然で、運命なのだと、私は思う。
自らの身体が散り散りになって、目の前が電源の切れたゲーム機のようにブツンと途切れるその様を、暗い頭の中に鮮明に浮かべながら。
しかし死というものは、そう簡単に掴めてはならないものである。
あれは本来スタッフロールの最後の最後、画面が暗転した時に迎えるもので、一番初めのステージで得られてしまっては報酬制度が成り立たない。
ゲームをクリアしてまで死を手に入れたいかと問われれば多くの人間が否定するだろうが、大抵の人間はゲームを進めている間に何度も死を願うものだ。
そして最後には与えられる死をただ享受し、諦めと同時に落ち着きを得る。
これで良かったのだと、寝付かない幼子に子守唄を歌うように、嘔吐く友人の背をさするように、安息の地へと向かうのだと、プログラムにはそう書かれている。
ならば、生を受けて僅か十八年の彼女がその報酬を手にするのは、些か間違いでは無いだろうか。
彼女を守る者として、彼女が望まぬ報酬を得るのを黙って見ているわけにはいかない。
彼女が望まないのなら、西馬ニコという人間がそれを選ばないのなら、死とは彼女にとっての害であり、私にとっての悪である。
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作者名:L | 作成日時:2022年3月18日 23時