【短編集】あなたのための物語【仮面ライダーエグゼイド】 (ページ29)

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秋、きみと【花家大我】ページ29

ふわり、と赤い葉っぱが目の前を通った。
マフラーに埋めた鼻先をあげて目で追えば、揺れた髪の向こうに花家先生が見える。
白い白衣が赤い世界によく映えていた。

「せぇーんせっ！」

勢いのまま飛びつけば、まるで次にどう来るかわかっていたかのように軽々と受け止められる。
ふっとどこか嗤うように上がった口角が愛おしくて、わたしもできる限りの笑顔を浮かべて花家先生の首に手を回した。

「暑苦しい」

押しのけるように手を顔の前に出される。秋にしては低すぎる気温の中で、薄着の先生にそれを言われて騙されるほどバカじゃない。
だけど照れたように顔を背ける花家先生に免じて、今回は言わないであげることにした。

「ふふふ」

噛み締めるように笑えば、何笑ってんだと花家先生が笑う。
真っ赤な世界でふたりきり、わたしは今、きっと世界で一番幸せだ。