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病院を出て周囲を見渡すと、Aに似た背格好の人物が病院前のベンチに腰かけていた。
駆け寄るとそれは案の定Aで、ここにいたのかと前に仁王立ちする。
お疲れ、と小馬鹿にしたように笑われて、逃げられないように腕を掴んだ。
女性に対して失礼か、とも思ったが、また逃げられては困る。
痛くない程度に掴んだ腕を引いて、Aを立たせた。
「CRに戻るぞ」
「ちょっと待ってよ、まだ行きたい場所があるのに」
話を聞くのはCRに戻ってからだ。
と言っても、俺も暇ではない。
むしろ忙しい中合間を縫って探し回っていたのだから、もっと感謝されるべきだと思う。
早くCRに押し込んで、後のことはポッピーピポパポに任せよう。
一人そんなことを考えながら、パスワードを入力しCRのドアを開けた。
「飛彩!Aちゃんは見つかった?」
「ああ、外のベンチに居た」
「よかったぁ!あれ、でも連れ戻してこなかったの?」
「Aならここに、………」
変なことを言うポッピーピポパポを疑問に思いながら後ろを振り向くも、さっきまで大人しく連れられて来ていたAが見当たらない。
空を掴んでいた手を閉じたり広げたりして、逃げられたことに気がついた。
今思えばパスワードを打ち込む時に少し掴む手が緩んだかもしれないが、逃げるタイミングをじっと待っていたというのか。
外に出ることへの強すぎる執念にため息をついて、ポッピーピポパポに言った。
「俺は仕事に戻る」
いいの?と尋ねるポッピーピポパポに返事をするように階段の方を指させば、ポッピーピポパポもそちらを見やって首を傾げた。
「そこにいるのはわかっている。仕事が終わったら説教だ、覚悟しておけ」
階段から少し顔を出したAが、顔を引きつらせながら返事をする。
驚くポッピーピポパポと、なんでバレたのと言いたげなAの表情にふ、と自慢げに笑って、白衣を翻した。
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作者名:L | 作成日時:2022年3月18日 23時