【短編集】あなたのための物語【仮面ライダーエグゼイド】 (ページ18)

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乙女ふたりとツートンカラー【ポッピーピポパポ】ページ18

「あれ、髪染めたんですか？」

ふいに聞こえたエムの声に、筐体の中から外を覗く。
問いかけの先には、CRの関係者ではない女の人がいた。

「うん、ポッピーちゃんとおそろい」

女の人ことAちゃんが、髪を揺らして振り向く。
真っ黒だった髪は毛先だけピンク色に染まっていて、Aちゃんによく似合うなと思った。

Aちゃんは仮面ライダークロニクルの騒動の時に、わたしが映ったCMを見てわたしに一目惚れしてくれた、らしい。
ラヴリカたちのところにいた間の記憶はうっすらあるくらいで、正直あんまり覚えていないんだけど。

それからAちゃんはCRのみんなとどうやったのか仲良くなったみたいで、気がついたらCRに入り浸るようになっていた。
なにがなんだかよくわからなくて頭を抱えるわたしに「まずは外堀を埋めるところから、と思って」と言ったAちゃんの顔は、未だに忘れられない。

ふいに、Aちゃんがわたしの方を振り向いた。筐体に近づいてきて、少し言うのを迷ったあと口を開く。

「出てきて髪の感想、聞かせてほしいな…なんて」

恥ずかしそうに笑って誤魔化すAちゃんはまるで小さな女の子みたいで、恋をした女の人はみんな乙女になるんだなぁとぼんやり思う。
恐る恐る筐体を出て、Aちゃんの前に立った。

さっきよりもAちゃんが近くなって、髪が光を反射してきらきら光っているのとか、さらさらの髪が揺れるのが今にも消えちゃいそうに見えるのとか、そういうものをよりはっきり感じてしまう。
わたしよりもちょっとだけ高いAちゃんの顔を見ながら、恥ずかしさを隠すように笑ってみせた。

「とっても似合ってる、よ。すっごくかわいい…」

きらきらと瞳を輝かせて手を握られて、Aちゃんも手汗とかかくんだなぁと思う。
Aちゃんの顔が近くて、きらきらが眩しすぎて、他のところに意識を逸らさないと今にも倒れてしまいそう。
どうにかして離れなくちゃ、と必死で頭を回して、ぱっと口を開いた。