傷心の彼女 -YS- ページ48
YS-side
車を走らせながら何回かAに電話をかける。
──出ないな。どこにいるんだ？
どこに行けばいいのか分からなくて、あちこち回ってみたが、見つかるはずもなく・・
とりあえずAのマンションの前に車を停める。
そこで再び電話をすると、やっと繋がった。
YS「どこにいるんだ？大丈夫か？」
「うっ・・ヒック・・キムさん・・」
電話の向こうのAは涙声だった。
YS「あ〜俺の手の届かない所で泣くなっ・・すぐに迎えに行くから！」
「いつもの・・ウッ・・公園・・」
YS「え？」
車から降りていって見ると・・あの夜と同じようにベンチに座っているAがいた。
駆け寄ってAの目の前に立つ。
YS「見つけた・・」
「あ・・本当にすぐ来た・・ック・・」
YS「大丈夫か？」
「んっ、うっ・・キム・・さん」
涙をポロポロ流すAを、思わずギュッと抱きしめていた。
・
・
・
Aを連れて、車に戻る。
走らせている間にも助手席で泣き続けていたが、少しずつ落ち着いて。
やがて、ポツリポツリと口を開いて、話し出した。
「店長に・・婚約者を紹介されたんです。すごく綺麗で、大人で・・」
YS「そうか・・」
「しかもすごくいい人で・・優しくて・・店長とお似合いで・・」
YS「うん・・」
「驚いたけど・・すぐにおめでとうございますって言えたんです」
YS「うん、頑張ったな・・」
「でも・・ずっと憧れてた人だし、やっぱり寂しいなって・・なんで今まで一度も話してくれなかったんだろうって」
YS「そうか・・」
「韓国に来たのも、彼女と結婚するためだったって。それなのに、私・・全然気がつかなくて」
YS「ん・・」
「妹だって・・店長にとって私は妹だって・・それって私が女として見えないってことですよね？」
妹・・
そのセリフを聞いたとき、俺の心がズキッと痛んだ。
「でもね、嫌じゃなかったんです。可愛い妹だって、大事なパートナーだって紹介してくれたのは嬉しくて・・でも、それならもっと早く教えてほしかったって思うと・・やっぱり涙が出てきちゃって・・」
そこまで話すと、またこみ上げてきたようで、両手で顔を覆って泣き出した。
そのまま走り続け、海の見える高台まで来て、車を停めた。
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作者名：紫桜雲
| 作成日時：2016年1月22日 20時
