25.平静〜2〜 ページ25
「今の反応はOKということじゃな」と、ニコニコしながら言うカクさん。
「良くない！ よくないです‼」
慌てて首を振り、否定する。
「もう、無理じゃ……」
そう言いながら、カクさんの顔が私に近づいてきた。
「カッ、カクさん！ 待って‼」
もう少しで唇が重なる。
その瞬間、私の記憶がフラッシュバックした。
「……る…い……兄…」
そう呟くと、自分でも気がつかないうちに涙が頬を伝っていく。
「A？
どうしたんじゃ⁇ そんなに嫌じゃったか」
涙を流している私に気がつき、カクさんは申し訳なさそうに、腕の拘束をとき「すまんかったのぅー」
そう言いながら、私の髪を優しく撫でてくれた。
「違うんです。カクさんのせいじゃないんです。
カクさんは違うのに。違う人なのに！ ただ、私が弱いだけなんです」
カクさんが責任を感じてしまわないよう、そう言ったが、涙が溢れてきてしまう。
どうしよう。
止まらない。
ここにあの人はいないのに。
もう、怖くないのに。
泣いてしまっている自分が嫌で、手で顔を隠そうとすると、優しく手を握られた。
……カクさん？
そのまま、先ほどよりずっと優しく抱きしめてくれた。
「もう大丈夫じゃ。もう大丈夫」
そう言いながら、背中をポンポンとたたいてくれる手が温かくて。
優しく抱きしめてくれたその温もりを感じながら、私はそっと瞼を閉じた。
※※
寝たか。
Aの寝息を確認し、ポンポンと背中をたたいていた手を止めた。
Aを傷つけてしまっただろうか。
先ほどのAの様子は、明らかにおかしかった。
初めは嫌なのか。と思った。
無理矢理しようとした自分を、責めた。
でも、それだけじゃない。
Aの目には、恐怖の色が見えた。
わしにではない。
違う誰かに恐怖を感じていた。
Aが呟いた名前。
誰じゃ！
「あの人とは違う」
誰なんじゃ‼
「お前は一体、何をかかえてるんじゃ」
そう小さい声で呟きながら、優しく髪をなでる。
そして、もう1度優しく抱きしめた。
Aが夢の中では泣かないように。
そう祈りながら。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1139人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
奏(Kanade)(プロフ) - 詩織さん» ディーオのことまでそんな風に言っていただけるなんて！！詩織さんが尊いww (2021年12月30日 23時) (
レス) id: 2a68d08880 (このIDを非表示/違反報告)
詩織(プロフ) - ディーオ尊いな…………. (2021年12月2日 14時) (レス) @page12 id: 2cd8c67a18 (このIDを非表示/違反報告)
奏(Kanade)(プロフ) - MAREさん» コメント、気がつかなくてすみません。ディーオは分かるのですが...吸血鬼ってなんでしょう？すみません、無知で。ちなみに前文にも書いてますが、12話まではキャラ誰も出てこないですwwすっとばして13話以降からお読みくださいねー(^^) (2021年7月20日 1時) (レス) id: 2a68d08880 (このIDを非表示/違反報告)
MARE(プロフ) - やばいディーオとか吸血鬼しか出てこないw (2021年5月25日 23時) (レス) id: 7446762651 (このIDを非表示/違反報告)
奏(Kanade)(プロフ) - jaさん» そうなんですよー。でも、きっと言い方やニュアンスによって言葉は変わりそうですが、単語のみの意味だとそうなります^ ^勉強になるだなんて、恐れ多い！！笑 (2020年3月22日 13時) (レス) id: 9dfcc2ee40 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：奏 | 作成日時：2017年12月10日 12時
