133. あゝ、アラバスタ！ (涙の滴) ページ38
翌朝、私たちの見送りをしてくれたトトさんから水を手渡された。
「トトさん、これ……」
「ああ。水だ」
「うわっ‼ 水じゃん！ 出たのか⁉」
「昨夜、君が掘りながら眠ってしまった直後にね。湿った地層に辿りついたんだ」
ルフィはトトさんから水を受け取ると首元に下げ、感動しているのか目元をキラキラさせている。
私たちはトトさんに大きく手を振りユバからカトレアへと出発をした。
一刻を争う今の状況。自然とカトレアへと向かう足は速まっていく。それに、宿屋で休ませてもらったことで体力も十分に回復している。
これなら来た時よりも早くカトレアに戻れそうだ。
そうして皆が急ぐなか、ルフィが急に足を止めた。
そればかりではなく、木の根本にどかっと腰まで下ろし、座り込んでしまったのだ。
「ルフィ？」
「んん……」
どうしたのか？ と、私がルフィに声をかけるも彼は何かを考えるように口を横に結んだまま。
「やめた」
そのすぐ後に彼から出た言葉に、全員が「は!⁇」と声を上げる。
当たり前だ。
なぜ、ここに来て急に……。
ルフィの行動の真意が見えなくて、みんな戸惑いを隠せないでいた。
「"やめた"って……⁉ ルフィさんどういうこと‼?」
「戻るんだろ？」
ビビやサンジの問いかけに答えることなくルフィは一言、私たちにそう聞き返す。「そうだよ！ ……さァ、行くぞ‼」とサンジが急かすも「つまんねェ」と淡白な返事しかしないルフィ。
ルフィの様子から見ても、別にふざけているわけではなさそう。
じゃあ、なんで？
疑問はつきないが、私は声をかける事を止め、ルフィの次の言葉を待つことにした。
「……ビビ」
「なに？」
「おれはクロコダイルをぶっ飛ばしてェんだよ‼」
……ルフィの怒っている気配が伝わってくる。
「反乱してる奴らを止めたらよ……クロコダイルは止まるのか？ その町についてもおれたちは何もすることがねェ。海賊だからな、いねェほうがいいくらいだ」
彼の言葉に誰も何も返すことができない。でも、彼の言うことは本当にその通りで……カトレアに辿り着いたとしてもなにもできない。
「お前はこの戦いで誰も死ななきゃいいと思ってるんだ‼ 国のやつらも、おれ達もみんな‼
七武海の海賊が相手でもう100万人も暴れだしてる戦いなのに、みんな無事ならいいと思ってるんだ‼
……甘いんじゃねェのか」
ルフィの重たい言葉の奥にある想いを、この時私はようやく理解した。
134. あゝ、アラバスタ！ (涙の滴 2)→←132. あゝ、アラバスタ！ (1つの水 5)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 561人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
奏(Kanade)(プロフ) - アリスさん» ありがとうございます！よろしくお願いします^ ^ (2021年5月2日 18時) (
レス) id: 9dfcc2ee40 (このIDを非表示/違反報告)
アリス(プロフ) - 返信ありがとうございます！また更新してくださって嬉しいです！これからも応援しております。 (2021年5月1日 18時) (レス) id: 7e246103d6 (このIDを非表示/違反報告)
奏(Kanade)(プロフ) - アリスさん» 初めまして！コメントの返信が遅くなってすみません。連載この連休で少し進める予定です。アリスさんにこの連載を好きと言っていただけて、すごく嬉しいです！頑張る気力が湧いてきました笑(^^) (2021年4月29日 14時) (レス) id: 9dfcc2ee40 (このIDを非表示/違反報告)
アリス(プロフ) - 奏さん初めまして！いつもこの作品を楽しく拝見させていただいております。この作品はもう更新しないのでしょうか？私はこの作品が凄い好きなので、良ければまた更新再開して欲しいです！ご検討よろしくお願い致します。 (2021年4月6日 18時) (レス) id: d582cbc40a (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑炭酸(プロフ) - 夢主愛され最高ですよね！！ お悩み中なのですね！救済していただけると私はすごく嬉しいですが死んだとしても奏様のこの作品大好きです！これからも応援してます！ (2021年1月16日 18時) (レス) id: 72cb3f7599 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：奏 | 作成日時：2019年9月25日 19時
