５９ ページ10
「俺は、Aちゃんもキヨも大好きだ」
真っ直ぐと私を見つめるフジの言葉。
「だから、大好きな２人が苦しんでるなら力になりたい。また２人で笑って遊ぶ姿が見たいんだよ」フジが口にした似たような言葉を、ヒラも言っていたことを思い出す。
「俺は、Aちゃんの気持ちもキヨの気持ちもわかるよ。好きな人に受け入れてもらいたい気持ちも、今の関係を崩したくないって気持ちも」
「…」
「でもね、誰かを好きになる気持ちは否定したくない。誰かが誰かを好きになることは自然な事で、当たり前な事だと思うから」
そんなことわかってるつもりだよ。
そんな考えすら出来ない程に私には余裕がなくて、自分勝手にキヨのことを傷つける自分が許せなくなる。だからいっそのこと、キヨに突き飛ばされたかった。嫌われた方が楽になれた。
「第三者だからそんな綺麗事が言えるんだよ」
「…そーかもしれないね」
「好きだって言ってくれたのは驚いたけど嬉しかった。少なくとも私はキヨが好きだったから」
「…」
「でも今は…キヨを大切な友達だと思ってる。だから傷ついてほしくないし、傷つけたくない。それならキヨに嫌われた方が楽になれる」
友達だからって否定するくせに、彼の好意を心から拒絶できない優柔不断な自分が嫌い。
ふとした瞬間、彼が触れた唇の温もりを思い出してしまう自分が嫌い。彼を傷つけている自分が…大嫌い。
「Aちゃんも充分綺麗事言ってるよ」
「じゃあどーすればいいの？」
教えてよフジ…、私はどーすればいい？
「俺がAちゃんに何か言っても、それはAちゃんの言葉じゃないよ」
苦笑いを見せるフジ。
「俺に出来るのは、Aちゃんの気持ちを少しでも軽くしてあげるくらい…」小さな声で頼りなさそうに呟き、私を見据えるフジはとても辛そうに見えた。
「キヨは、Aちゃんの言葉を待ってるはずだから」
「！」
「キヨの気持ちに応える必要なんてない。ただ、Aちゃんの気持ちを真っ直ぐ、キヨに伝えればいいと思うよ」
何それ…答えになってないよ、フジ。
傷つけるとわかってて、大切な友達に真っ直ぐとした気持ちなんて、伝えられない。
「…友達でいたいから、キヨの気持ちに応えられないって？そんな残酷なこと…言えないよ」
「残酷でもいい。傷ついてもいい。友達のままでもいい」
「Aちゃんの言葉を、キヨに伝えてあげてほしいんだよ」と呟いたフジに何も言い返す事が出来なかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 58人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：わたがし | 作成日時：2020年11月25日 12時
