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大切な友人だと思ってるからこそ、苦しめたくないし苦しんでほしくないと思う。それでも彼の想いを受け入れられないのは、私の中でそれ以上の関係になりたくないってどこかでストッパーが掛かるから。
だけどその気持ちを誰かにわかってほしいわけじゃない。誰かに共感してほしいわけじゃない。それでも、目の前の彼に差し伸べられた掌へ手を伸ばしそうになってしまう。フジの優しさに、甘えたくなってしまう。
弱い私の心が、彼に甘えたがってる。
そんな自分の弱い心が彼に知られないように、彼の見えない場所で小さく拳を握った。
「…キヨは、友達だから」
「うん」
「でも、友達としていたいって思ってるのは私の気持ちで…」
「うん」
「キヨは…、」
もしも私がキヨの立場だったなら…友達としてなんていられない。笑ってなんていられない。
なのにキヨは笑って「お前の友達だから」って言うんだ。それが辛くて、苦しくて仕方ない。
「キヨは、Aちゃんのことが好き」
「…」
「だから、つらい？キヨの気持ちに応えられないことが、苦しい？」
まるで私の考えてることがわかるみたいに、フジは心中で思う私の考えを見透かすみたいに当ててくる。
適当に注文をしたフジが私にタブレットを渡してくる。それを受け取った私は、注文画面を見据えたまま口を閉ざした。
「キヨはさ」
「！」
唇を閉ざした私のせいでお互いの間に暫く沈黙が流れたが、フジが声を発した。
「あいつは不器用な奴だから、きっと今もAちゃんが自分を責めない道を選んでると思う」
「…それが嫌なの」
「どーして？」
「いっそのこと『お前みたいな女は消えろ』って罵倒された方が楽だった」
いっそのこと、『お前なんて友達じゃない』って突き飛ばされた方が楽になれた。
そしたら私は皆の前から姿を消して、この出来事をいつの日かは過去にしてまた新しい明日を迎えることが出来た。それ程までに私は彼に酷いことしたし、口にもした。
「お前なんか好きにならなきゃよかったって…！言われた方が楽だったの！」
視界が徐々に歪んでいく。瞳に溜まる水が今にも溢れそうになるのを我慢するように強く強く拳を握って我慢した。フジに見られたくなくて俯いた拍子に一粒の滴が落ちる。
「それは、逃げてるだけだよ」
「ッわかってるよ！でも…」
「あいつの気持ちを否定しないでくれよ」
フジは震える声で私に呟いた。
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作者名：わたがし | 作成日時：2020年11月25日 12時
